猪道

猪道

ししみち

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意味・由来

「猪道(ししみち)」とは、野生の猪が山中や里山を通り抜ける際に踏み固められてできた細い獣道のことです。猪は秋になると、実った作物を荒らしたり、木の実(団栗や椎の実など)を求めて山を精力的に動き回ります。決まった通り道を使う習性があるため、草木が押し分けられ、土が削られて独特の細道が形成されます。人の手で作られた道とは異なる荒々しさや野生の気配、深山幽谷の静けさと緊張感を伝える三秋の季語です。

この季語で詠むコツ

猪そのものを直接描かなくても、「猪道」という言葉だけで野獣の生々しい気配や山の深さを表現できます。人の道から外れて獣道へ迷い込んでしまった際の心細さや、落ち葉に埋もれかけた細い筋を発見したときの驚きなど、視覚や触覚を意識して詠むと効果的です。また、秋の夕暮れや月夜といった時間帯と結びつけることで、妖しくも美しい情景を立ち上げることができます。

相性のいい言葉・取り合わせ

  • 自然・植物:落葉、団栗、芒(すすき)、葛の蔓、藪、岩肌
  • 情景・時間:日暮、夕月、薄闇、朝露、霧、深山
  • 動詞・状態:険し、途切る、迷ひ入る、踏み分く、沈黙

猪道」の俳句例 (3件)

猪道に迷ひ込みたる日暮かな
高浜虚子【現代語訳】歩いているうちにいつの間にか猪道へ迷い込んでしまい、気がつけば山の日が暮れてゆくことだ。 【鑑賞】人の道だと思って進んでいた道がいつしか獣道になり、夕暮れが迫る恐怖と心細さを素直に詠み出しています。山の秋の暮れやすさと緊張感が伝わる一句です。
猪道や月を仰いで昇るもの
右城暮石【現代語訳】猪の通り道を見上げると、夜空の月を仰ぎ見るように険しい山の上へと昇っている。 【鑑賞】急勾配の山肌をまっすぐに突き進む猪道。その先に澄みきった秋の月が輝いているというダイナミックな構図です。野生の力強さと月光の静寂が見事に対比されています。
猪道に入りこんでゐる草刈女
前田普羅【現代語訳】草を刈る女性が、いつの間にか猪の通る険しい獣道へと踏み入っている。 【鑑賞】深山の厳しい自然環境と、そこで働く里人のたくましさが交差する情景です。猪道という野生の領域に日常の労働が重なることで、山村のリアルな生活感が浮かび上がります。

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