1899年 - 1995年

右城暮石

うしろぼせき

作風・特徴

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生涯・略歴

右城 暮石(うしろ ぼせき、1899年7月16日 - 1995年8月9日)は、日本の俳人。高知県出身。

代表句 (16件)

鎌祝ひ山に夕日の残りたる
季語: 鎌祝 (autumn)
【現代語訳】無事に刈り終えたことを祝う鎌祝が行われている間、外の山には秋の夕日がまだ美しく残っている。【鑑賞】大仕事を終えた安堵の宴の温もりと、外に広がる雄大な秋の夕暮れの風景との対比が非常に美しい作品です。自然の恵みを受け、自然のサイクルと共に生きる人間の暮らしを優しく静かに捉えています。
隠座頭どこへ行くぞと問ひたき日
季語: 隠座頭 (autumn)
【現代語訳】薄暗い物陰からひょっこりと姿を現したカマドウマに対して、「お前はこれからどこへ行くつもりなのだ」と問いかけてみたくなるような、そんな秋の一日である。【鑑賞】日陰で不器用に生きる隠座頭に対して、作者が深い親しみと寂しさを込めて語りかけています。自身の人生や所在なさを、当てもなく跳ねていく虫の姿に重ね合わせているようでもあり、温かみと哀愁が同居する名作です。
南国の風の荒さよ鹿児島祭
季語: 鹿児島祭 (autumn)
【現代語訳】吹き抜ける秋風がなんと荒々しく力強いことか。さすが南国の鹿児島で行われるお祭りだけのことはある。 【鑑賞】薩摩の風土を感じさせる、直球で勢いのある一句です。台風の季節でもある秋の南国の自然の厳しさと、それに負けない人々の祭りのエネルギーが、風の「荒さ」という言葉に凝縮されています。
かけ踊の太鼓の皮の白さかな
季語: かけ踊 (autumn)
【現代語訳】激しいかけ踊の中で激しく打ち鳴らされる太鼓の、その張りつめた皮の白さが、夜の闇に鮮烈に浮かび上がっていることだ。\n【鑑賞】夜の闇、うごめく人々の熱気の中で、一点の「白」として浮かび上がる太鼓の皮に焦点を当てた、色彩感覚に優れた一句です。激しく打ち鳴らされる太鼓の乾いた高音まで聞こえてくるような、張り詰めた空気感が表現されています。
竈山の祭や風の砂を吹く
季語: 竈山祭 (autumn)
【現代語訳】竈山祭の当日、境内には強い秋風が吹き荒れ、参道の砂を激しく舞い上げている。 【鑑賞】静寂な神域で行われる祭りと、自然の荒々しい「風と砂」という動的な対比が印象的な一句です。砂を巻き上げる強い風の描写が、秋の深まりと祭りの熱気を同時に表現しています。
混群のすぐに過ぐたる冬木立
季語: からの混群 (autumn)
【現代語訳】小鳥たちの混群が、にぎやかに鳴き交わしながらあっという間に冬木立の梢を通り過ぎていってしまった。 【鑑賞】シジュウカラやメジロなどの混群は、せわしなく移動します。それまで騒がしかった林が、群れが去ることで一瞬にして元の冷たい静寂に戻る様子を、「冬木立」の寒々しさと共に見事に捉えた一句です。
黍刈つて空の広さを知りにつけ
季語: 黍刈る (autumn)
【現代語訳】背の高い黍を刈り進めるにつれて、ふと頭上に広がる空の大きさに気づいたことだ。 【鑑賞】自分の背丈を超えるような黍の群落が刈り取られるに従い、遮られていた視界がぐんぐんと開けていく解放感を素直に詠んでいます。秋の空の高さと澄み渡る広大さが強く印象に残る一句です。
球根を植ゑて手もて圧しけり
季語: 球根植う (autumn)
【現代語訳】球根を土の中に植え入れて、仕上げに手のひらでぐっと土を押さえた。【鑑賞】球根がしっかりと根を張るようにと、手でしっかり土を圧する動作に焦点を当てています。無言の作業の中にある力強さと、芽吹きを祈るような思いがダイレクトに伝わってきます。
油桐実をつけて幹太りけり
季語: 油桐の実 (autumn)
【現代語訳】油桐が豊かな実をつけ、その実りを支えるように幹もまた逞しく太っていることだ。 【鑑賞】実そのものだけでなく、実を宿した木全体の力強さに着目した句です。枝に重たい実をたくさん実らせる油桐の逞しい樹勢が、「幹太りけり」という直截な描写によって実感豊かに伝わってきます。
猪道や月を仰いで昇るもの
季語: 猪道 (autumn)
【現代語訳】猪の通り道を見上げると、夜空の月を仰ぎ見るように険しい山の上へと昇っている。 【鑑賞】急勾配の山肌をまっすぐに突き進む猪道。その先に澄みきった秋の月が輝いているというダイナミックな構図です。野生の力強さと月光の静寂が見事に対比されています。
台風の眼に入りたる静けさよ
季語: 台風眼 (autumn)
【現代語訳】台風の目の中に入ったのであろう、急にあたりが静まり返ったことだ。【鑑賞】猛威を振るっていた暴風雨がふっと途絶え、訪れた無気味なまでの静寂を素直に捉えています。「静けさよ」という詠嘆に、ほっとした安堵感と、これからやってくる吹き返しの嵐への緊張感が同時に滲み出ています。
田五加咲く溝をまたぎて畑へ出づ
季語: 田五加 (autumn)
【現代語訳】田五加が咲いている小さな用水路をひらりとまたぎ越して、畑仕事へと出ていく。 【鑑賞】農村の日々の営みを飾らずに切り取った写実的な句です。用水路のふちに咲く田五加の姿が、作業に向かう足元から自然と浮かび上がり、土と水に生きる暮らしの健やかさと秋の深まりを感じさせます。
電気水母青き風船うち揚ぐる
季語: 電気くらげ (autumn)
【現代語訳】波が、まるで青い風船のような電気くらげを浜辺に打ち上げている。\n【鑑賞】カツオノエボシの気胞体が青い風船のように膨らんでいる形状を、客観的に鮮やかに写生した一句です。玩具の風船のような軽やかで美しい見た目と、猛毒を持つ生物であるという危険な現実とのギャップが、秋の渚の情景を鮮烈に際立たせています。
海桐の実はじけて海へ傾けり
季語: 海桐の実 (autumn)
【現代語訳】海桐の実が割れて赤い種を覗かせ、その枝は広大な海に向かって身を乗り出すように傾いている。 【鑑賞】潮風に晒されながらも、海に向かって枝を伸ばす海桐のたくましさと、はじけた実の赤が印象的です。「海へ傾けり」という動勢のある描写により、荒々しい海岸の断崖や吹き付ける風の存在が鮮やかに想起されます。
隼人瓜もぎたるあとの明るさよ
季語: 隼人瓜 (autumn)
【現代語訳】棚に茂っていた隼人瓜をもぎ取ったあと、棚の下へすっと光が差し込んできて明るくなったことだ。 【鑑賞】大きな実をもぎ取ったことによる視覚的な変化(光の入り具合)を鮮やかに詠みとめています。実の重みが消えた開放感と、秋の日の差し込む明るさが心地よく響き合う秀句です。
腹広蜻蛉とまれば尾をば反らしけり
季語: 腹広蜻蛉 (autumn)
【現代語訳】腹広蜻蛉が草や枝先に止まると、その平たい尾をツンと上へ反らせた。【鑑賞】腹広蜻蛉の典型的な習性である「日光を避ける、あるいは威嚇のために腹部を直角近く持ち上げる姿勢」を正確に写生しています。観察の確かさと、どこか滑稽で愛らしい虫の佇まいが素直な言葉で生き生きと描かれています。