酒涙雨

酒涙雨

さいるいう

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意味・由来

「酒涙雨(さいるいう)」とは、陰暦七月七日の七夕の夜(または当日)に降る雨のことです。「催涙雨(さいるいう)」とも書かれます。年に一度だけ天の川を渡って逢瀬を果たす織姫と彦星が、雨のために天の川の水かさが増して逢えなくなり流す悲しみの涙、あるいは無事に逢えた後の別れを惜しんで流す涙にたとえられています。古くから語り継がれる星の伝説に由来する、非常にロマンチックで切ない情緒を秘めた秋の季語です。

この季語で詠むコツ

七夕の夜の雨という特定のシチュエーションを持つ季語のため、空の様子や地上での人間の営みと星の物語をどう重ね合わせるかがポイントです。単に「雨が降って残念だ」と詠むだけでなく、しとしとと静かに降る雨音や濡れる笹竹、雨の合間に見え隠れする夜空の気配などを描写すると、哀感や艶っぽさが引き立ちます。恋情や惜別の情念を雨の描写に託すことで、情感豊かな一句になります。

相性のいい言葉・取り合わせ

・情景を深める言葉:笹竹、短冊、天の川(銀河)、星、夜半、軒端、灯影 ・感情や様子を表す言葉:濡るる、ほのめく、惜しむ、更くる、しづかに

酒涙雨」の俳句例 (3件)

酒涙雨銀河も濡れてしまひけり
正岡子規【現代語訳】七夕の夜に降る酒涙雨によって、天上の天の川までもがしっとりと濡れてしまったことだ。【鑑賞】地上の雨の情景から一気に天上の銀河へと視線を広げた雄大で詩情あふれる一句です。星たちの涙雨が天の川そのものを濡らしているかのような幻想的なイメージを描き出し、七夕の切ない物語を美しく際立たせています。
酒涙雨傘さして行く七夕かな
高浜虚子【現代語訳】酒涙雨が降るなか、傘をさして歩いていく七夕の夜であることよ。【鑑賞】あいにくの雨となった七夕の夜、傘をさして歩く日常の光景を淡々と詠みながらも、「酒涙雨」という季語の持つ伝説の重みと響き合っています。傘の下でふと夜空の織女と牽牛の逢瀬を想うような、静かでしみじみとした余韻を感じさせます。
酒涙雨更けてあがるや草の露
富安風生【現代語訳】七夕の夜に降っていた酒涙雨が夜更けになってようやく上がり、草の上には露となって残っている。【鑑賞】雨が上がった深夜の清浄な空気感を捉えた作品です。草の葉に残る露は、まるで天上の二人が流した涙の雫のようでもあり、雨上がりの静寂とともに星々の再会や別れの余韻を静かに物語っています。

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