落し水

落し水

おとしみず

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意味・由来

「落し水(おとしみず)」とは、初秋から仲秋にかけて、稲刈りを控えた田んぼから水を抜くこと、またその抜かれて水路へと勢いよく流れ出る水を指す季語です。春の田植え以来、稲の成長を支えてきた田の水を落とす作業は、いよいよ収穫期が訪れたことを告げる農作業の大切な節目です。豊かな実りへの喜びとともに、青々としていた水田の風景が黄金色へと変わり、やがて水が引いていく季節の移ろいや一抹の寂しさを感じさせます。

この季語で詠むコツ

「落し水」を詠む際は、視覚だけでなく「聴覚」や「水の動き」に着目するのがポイントです。水口(みなくち)や樋(ひ)からサラサラ、あるいは勢いよく水路へと流れ落ちる音、水が引いた後の湿った土の匂いや露出する泥の質感を描くと臨場感が高まります。また、水が抜けていくダイナミックな動きと、静かに頭を垂れる黄金の稲穂という静と動のコントラストを意識すると、秋の深まりを情緒豊かに表現できます。

相性のいい言葉・取り合わせ

  • 水口(みなくち)、樋(ひ)、畦(あぜ)、水路
  • 泥、土の香、小魚、沢蟹(逃げ惑う生き物)
  • 黄金色、夕暮れ、日暮、秋の風、音の響き

落し水」の俳句例 (3件)

落し水とどまることのなかりけり
高浜虚子【現代語訳】田から抜かれた水は、片時もとどまることなくさらさらと流れていくことだ。【鑑賞】田んぼの口を開けて流れ出た水が、勢いを緩めることなく流れ去っていく様子を、平明な言葉で力強く詠んでいます。収穫前の水田の慌ただしさと、季節が一刻の猶予もなく秋深まりへと進んでいく無常観が、淀みない水のリズムに重ねられています。
落し水日暮は音のつよまりぬ
野村喜舟【現代語訳】田から流れ出る水の音が、夕暮れ時になるといっそう強まったように聞こえてくる。【鑑賞】周囲が薄暗くなり、視界が遮られて静まり返る夕暮れ時、水路を走る水の音だけが一段と際立って響いてくる情景を捉えています。秋の日の暮れの早さと、冷ややかに澄んでいく夕気の空気感が聴覚を通してありありと伝わる名句です。
落し水音のまろべる夜に入りぬ
桂信子【現代語訳】昼間は激しく聞こえていた落し水の音が、夜に入るにつれてまろやかで優しい響きへと変わっていった。【鑑賞】「音のまろべる」という繊細な把握が秀逸な一句です。昼間の荒々しい水の勢いが夜の静寂に溶け込み、柔らかい水音となって耳に届く様子を描いています。女性俳人らしい柔らかな感性で、秋の夜の深まりと静けさを表現しています。

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