沼太郎

沼太郎

ぬまたろう

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意味・由来\n「沼太郎(ぬまたろう)」とは、千葉県の印旛沼や手賀沼をはじめとする利根川下流域・湖沼地帯で、秋から初冬にかけて吹き荒れる猛烈な北東の突風・暴風を指す局地風の季語です。かつて舟運や水鳥猟、漁業が盛んだった水辺の地域において、湖面を白波で覆い尽くし、小舟を転覆させるほどの恐ろしい風を擬人化して「太郎」と呼んだことが由来とされています。容赦なく吹き荒れる過酷な自然現象でありながら、恐ろしさの中に親しみと畏怖の念を込めて人の名で呼んだ、風土色と生活感の極めて強い季語です。\n\n### この季語で詠むコツ\n「沼太郎」という季語そのものに強い荒々しさと擬人化の響きがあるため、風の激しさを単に形容詞で説明するのではなく、風によって動く具体的な事物や生活の情景と結びつけるのがコツです。水面を激しく叩く波や騒ぐ葦の原、係留された舟が軋む音などを捉えると、風の猛威がリアルに立ち上がります。また、外で吹き荒れる沼太郎の寒風に対し、家の中のぬくもりや台所の物音、家族の営みといった「静と動」「内と外」の鮮やかなコントラストを意識して詠むと、物語性のある深い一句になります。\n\n### 相性のいい言葉・取り合わせ\n- 水辺の情景:波頭、葭(葦)の原、水煙、舟溜り、水鳥、暮色\n- 暮らし・生活:厨(台所)、炉火、灯、雨戸、薬湯、夕餉\n- 動き・響きを表す言葉:吹きつのる、吹き荒るる、軋む、鳴る、暮るる

沼太郎」の俳句例 (3件)

沼太郎吹きつのる夜の厨ごと
能村登四郎【現代語訳】沼太郎の風が一段と激しく吹き募る夜、台所からは夕餉の支度をする物音が絶え間なく聞こえてくる。【鑑賞】夜に入ってますます威力を増す外の暴風に対し、台所(厨)では温かい食事の準備が着々と進められています。自然の脅威と日常の家庭的な営みのコントラストが見事で、「沼太郎」という土着的な季語の力強さが家庭の温もりをより一層引き立てています。
沼太郎吹き荒るる夜の生薬湯
角川源義【現代語訳】沼太郎と呼ばれる激しい風が吹き荒れている夜、生薬を浮かべた風呂に浸かって体を温めている。【鑑賞】下総地方の水辺を吹きすさぶ冷酷な秋の嵐「沼太郎」の猛威を戸外に聞きつつ、室内で温かい生薬湯に浸かる情景です。外の冷たい暴風と湯気の立つ温もりという対比が鮮やかで、晩秋の厳しい気候の中で身体と心を労わる生活の情趣が豊かに描かれています。
沼太郎吹くや鳥屋舟もどり来ず
皆川盤水【現代語訳】沼太郎の突風が激しく吹き荒れているが、水鳥猟に出た鳥屋舟がまだ戻ってこない。【鑑賞】「鳥屋舟(とやぶね)」とは、湖沼で鴨などの水鳥猟をするための小舟のことです。突如として荒れ狂う「沼太郎」の恐ろしさと、荒波の中に取り残されているであろう舟を案じる張り詰めた緊迫感が伝わってきます。自然の猛威と向き合いながら生きる水辺の人々の厳しさが写実的に切り取られています。

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