後の二日灸

後の二日灸

のちのふつかぎゅう

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意味・由来

「後の二日灸(のちのふつかぎゅう)」とは、陰暦八月二日に行われるお灸の風習を指す仲秋の季語です。江戸時代から続く民間療法的な行事で、旧暦二月二日に行う春の「二日灸」に対し、秋のそれを「後の二日灸」または「秋の二日灸」「後の灸」と呼びました。この日に灸を据えると中風(脳卒中など)の予防になり、秋冷に向かう季節の変わり目にも病にかからず健康に過ごせると信じられていました。単なる病気治療というよりは、季節の節目に体調を整える年中行事としての性格が強い季語です。

この季語で詠むコツ

春の「二日灸」がこれから暖かくなる希望やのどかさを伴うのに対し、「後の二日灸」は朝夕の涼しさや初秋から仲秋へ移ろう空気の澄み具合、どこか身の引き締まるような感覚とともに詠むのがポイントです。灸の据えられた肌の温もりと、肌をなでる秋風のひんやりとした感触の対比を描くと季節感が際立ちます。また、夏の疲れを癒やし、来るべき冬に備えるという人の営みや生活の落ち着きをしみじみと捉えるのにも適しています。

相性のいい言葉・取り合わせ

・身体や温感に関する言葉:艾(もぐさ)、煙、熱(あつ)し、肌、肩、膝、温もり ・秋の気配・情景を表す言葉:秋風、朝涼(あさすず)、澄む、露、灯火、障子 ・生活感のある言葉:古りし家、手水(ちょうず)、畳、茶の香

後の二日灸」の俳句例 (3件)

後の灸すゑてすゞしくなりにけり
与謝蕪村【現代語訳】秋の二日灸を据え終わったところ、折りよく吹いてきた秋風が肌に心地よく、なんとも涼しく感じられることだ。 【鑑賞】灸をすえた直後の肌に残るジーンとした熱気と、折から吹き抜ける初秋の清涼な風の肌触りが見事に対比されています。生活の一コマを捉えながら、涼風が立つ季節の移ろいを肌感覚で伝えてくれる蕪村らしい平明で清潔感のある一句です。
後の灸すゑて身軽き月見かな
蝶夢【現代語訳】秋の二日灸を据えたおかげで体もすっきりと軽くなり、今宵の月見を清々しい心持ちで楽しむことだ。 【鑑賞】旧暦八月の年中行事である灸治を済ませ、心身ともに身軽になって仲秋の名月を愛でる喜びを詠んでいます。健康を願う素朴な庶民の暮らしぶりと、秋の風流な行事である月見とが自然に結びつき、晴れ晴れとした爽快感が漂います。
後の灸我身を惜しむ頃となつて
正岡子規【現代語訳】秋の二日灸を据えながら、ふと自分も健康や命の大切さを惜しみ、身体を労るべき年頃・時節になったのだと実感する。 【鑑賞】若き日には意識しなかった自身の身体や老い、あるいは病へのいたわりを「後の灸」という伝統的な養生法を通して自覚した感慨を詠んでいます。秋という命の盛りが過ぎていく季節感と、自己の命を見つめる内省的な眼差しが深く共鳴しています。

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