葛砧
autumn 生活

葛砧

くずきぬた

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意味・由来

「葛砧(くずきぬた)」とは、秋に葛(くず)の繊維で織り上げた「葛布(くずふ)」を木づちで叩き、柔らかく艶を出す作業のことです。古来より秋の夜長に響く砧の音は、哀愁を帯びた風物詩として和歌や俳句に詠まれてきましたが、特に葛布の産地(大和国や遠江国など)での風情を色濃く宿した季語が「葛砧」です。山里の澄んだ夜気の中にトントンと響き渡る素朴で乾いた音は、深まりゆく秋の寂寥感や、手仕事に勤しむ人々の暮らしを鮮やかに伝えます。

この季語で詠むコツ

「葛砧」を詠む際は、聴覚(打つ音の響きや間隔)、視覚(秋の月光、夜の静けさ、灯火)、触覚(葛布の固さや仕上がりの滑らかさ)といった五感を意識するのがポイントです。単に作業を描写するだけでなく、秋の静けさと音の対比を強調することで、夜の深まりや人の情を際立たせることができます。

相性のいい言葉・取り合わせ

  • 情景・時間:夜半(よわ)、月光、山里、灯影(ほかげ)、夜寒(よざむ)
  • 聴覚的描写:冴ゆる、遠音(とおね)、澄む、ひびく、こだます
  • 地名・風土:大和、遠江、吉野、掛川

葛砧」の俳句例 (3件)

葛砧遠江の宿の月
正岡子規【現代語訳】遠江の宿を秋の月が明るく照らす中、葛砧を打つ音が響いている。【鑑賞】葛布の本場である遠江の旅宿で過ごす秋の夜を、月と葛砧という古典的な取り合わせで端正にまとめました。無駄のない言葉選びによって、静寂の中に響く音の余韻が際立ちます。
葛砧打てきかせよならの酒
松尾芭蕉【現代語訳】葛布を打つ砧の音を聞かせてくれ。この名高い奈良の酒を味わいながら耳を澄まそう。【鑑賞】『野ざらし紀行』所収。大和路の旅宿で奈良の美酒を酌み交わしながら、土地の風物詩である葛砧の音を心待ちにする、旅情と風流味にあふれた名句です。
葛砧月にうなるや遠江
服部嵐雪【現代語訳】遠江の国の澄んだ月夜に、葛布を打つ砧の音が低く力強く響き渡っている。【鑑賞】葛布の名産地として知られる遠江(現在の静岡県西部)の秋の夜を描いた句。「うなる」という力強い表現により、冴えわたる月光と夜気に響く硬質で深い音の質感を巧みに捉えています。

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