草の主
autumn 植物

草の主

くさのぬし

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意味・由来

「草の主(くさのぬし)」は、秋の季語で、主に秋の草むらに生息する虫(キリギリスやクツワムシなど、ひときわ大きく鳴く虫)や、草むらに潜む蛇や蛙など、その場所を支配しているかのような存在を指します。また、草そのものの生命力や精霊、あるいは荒れ果てた庭や野原でひときわ大きく生い茂っている草そのものを指すこともあります。秋の夜、静まり返った草むらから聞こえてくる力強い虫の音に、目に見えない「主」の気配を感じ取る、日本人の繊細な感性から生まれた美しい季語です。

この季語で詠むコツ

「草の主」を詠む際は、ただの「虫」や「草」として描写するのではなく、そこに潜む「主」としての神秘性や存在感、生命の気配を捉えることが大切です。姿は見えなくても確かにそこに存在する気配、あるいは静寂を破る一筋の鳴き声などにフォーカスすると、句に深い奥行きが生まれます。視覚だけでなく、聴覚や夜の冷気といった触覚的な表現と組み合わせるのが効果的です。

相性のいい言葉・取り合わせ

  • 聴覚を刺激する言葉: 鳴き出づ、声、さざめく、静けさ、夜の底
  • 自然現象や時間帯: 夜更け、月夜、秋風、露、深い闇
  • 動作や状態を表す言葉: 潜む、逃げる、這ひ出る、そよぐ

草の主」の俳句例 (3件)

草の主何と鳴くぞや秋の風
加賀千代女【現代語訳】草むらの主であるあの虫は、一体どんな声で鳴くのだろうか。吹き抜ける秋の風の音ばかりが聞こえる中で、その姿なき主に思いを馳せている。 【鑑賞】秋風が寂しく吹き抜ける中で、草むらに潜む「草の主」に語りかけるような優しくも哀愁を帯びた一句です。目に見えない存在に対する千代女の繊細な好奇心と、秋の寂寥感が調和しています。
草の主逃げて見せるや露の玉
小林一茶【現代語訳】草むらの主(虫や蛙など)が、驚いて草の陰へと逃げていく。その拍子に、草の葉に宿っていたきらきらとした露の玉が、こぼれ落ちて美しく光る。 【鑑賞】一茶らしい、身近な小さな生き物への温かい目線が光る句です。「草の主」という言葉を使いつつ、逃げる生き物と、それによってこぼれ落ちる儚い「露の玉」の動的な対比が生き生きと描かれています。
草の主鳴き出でて夜の更けにけり
飯田蛇笏【現代語訳】草むらの主である虫が、ひときわ大きく鳴き始め、夜がいよいよ深く更けていくことだ。 【鑑賞】夜が深まるにつれて静まり返る周囲の中で、草の主の鳴き声だけが鮮明に響き渡ります。静寂と音のコントラストを通じて、深まりゆく秋の夜の厳かで孤独な美しさを格調高く詠み上げています。

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