草虱
autumn 植物

草虱

くさじらみ

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意味・由来

「草虱(くさじらみ)」とは、秋の野山を歩く際に、衣服や靴下、あるいは動物の毛などにいつの間にか付着する、粘着性や棘を持った植物の種子(実)の総称です。代表的な植物には、ノブキやセンダングサ、アレチヌスビトハギなどがあります。衣服にびっしりと取り付く様子が、まるで昆虫のシラミのように見えることからこの名がつきました。現代では「ひっつき虫」や「どろぼう」などの愛称でも親しまれており、秋の野歩きにおけるユーモラスで少し厄介な風物詩となっています。

この季語で詠むコツ

草虱を詠む際は、その「取り除くのが面倒だが、どこか憎めない」という日常的な滑稽さや、野山を歩いたという実感を活写するのがポイントです。単に「衣服についた」という事実だけでなく、それを指先で一つ一つむしり取る手元の動作や、その時にふと感じる寂しさ、あるいは旅の情緒など、心理的な動きや具体的な状況と結びつけることで、俳句に深い陰影を与えることができます。

相性のいい言葉・取り合わせ

草虱は極めて日常的で身近な素材であるため、生活感のある言葉や具体的な身体の部位、動作を示す言葉とよく調和します。例えば、「裾(すそ)」「袂(たもと)」「靴下」「指先」といった衣服・身体に関する名詞や、「払う」「むしる」「取る」「溢れる」といった動詞が相性抜群です。また、「一人」「旅路」「野道」「日暮れ」などの孤独感や旅情を醸し出す言葉と取り合わせることで、ペーソス(哀愁)のある魅力的な句になります。

草虱」の俳句例 (3件)

草虱払ふてあとの寂しさよ
村上鬼城【現代語訳】衣服についた草虱をすべて払い落としてしまうと、その後に何とも言えない寂しさが押し寄せてくることよ。【鑑賞】衣服にくっついていた草虱を、うっとうしいと思いながらも一つ一つ取っていく。その単調な作業が終わり、体から全てなくなってみると、急に独りきりの静けさや孤独感が身に染みて感じられるという、人間の微妙な心理を鋭く捉えた名句です。
草虱一つつきても旅は旅
富安風生【現代語訳】たった一粒の草虱が衣服にくっついているだけでも、それだけで自分が今、旅の途中にあることをしみじみと実感するものだ。【鑑賞】草虱は野山を歩いた確かな証拠です。たとえたった一つであっても、それが衣服についているだけで、日常を離れて自然の中に身を置いているのだという感慨が湧いてきます。旅情を身近な事物を通して軽妙に表現しています。
草虱むしり合ひつつ親しかり
高浜虚子【現代語訳】お互いの衣服についた草虱をむしり取り合っているうちに、二人の間の親しみがいっそう深まっていくことだ。【鑑賞】野山を散策した後に、お互いの背中や裾についた草虱を取り合う光景。この微笑ましくも細やかな共同作業を通じて、言葉を交わさずとも心の距離が縮まり、温かい親密な空気が流れる様子を自然体で描き出しています。

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