九月尽く
autumn 時候

九月尽く

くがつつく

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意味・由来

九月尽く(くがつつく)」は、旧暦の九月三十日、すなわち「秋の最後の日」を指す季語です。現在の暦では10月下旬から11月上旬頃にあたり、まさに晩秋から初冬へと移り変わる季節の境界線となります。この時期は、色鮮やかだった紅葉が散り始め、朝晩の冷え込みが一段と厳しくなる頃です。単にカレンダーの上の日付が変わるというだけでなく、実りの秋、美しかった秋が完全に去り、厳しく寂しい冬が到来することへの惜別の情(行く秋を惜しむ心)が込められた、極めて情緒深い季語です。

この季語で詠むコツ

九月尽く」という言葉そのものに強い哀愁や寂寥感が含まれているため、詠む際にはその雰囲気をさらに引き立てる具体的な情景描写を描くことがポイントです。例えば、冷たさを増した「雨」や「風」、日が短くなって早く訪れる「夜」、心細さを象徴する「灯火(ともしび)」などを用いると効果的です。また、過ぎ去った豊かな日々(秋)を振り返る主観的な心の揺れを、目の前の冷ややかな自然現象に託して詠み込むと、深みのある一句に仕上がります。

相性のいい言葉・取り合わせ

時間や光を表す言葉: ともしび(灯火)、夜半(よわ)、暮れ、夕闇 ・気象を表す言葉: 雨、風、凩(こがらし)、冷まじ(すさまじ) ・心の動きや動作: 惜しむ、更ける、聴く、見送る

九月尽く」の俳句例 (3件)

九月尽きぬともしびともす夜深う
正岡子規【現代語訳】九月がとうとう終わってしまう。夜もすっかり更けた頃、灯火をともして、しみじみとこの一日の終わり、そして秋の終わりを惜しんでいる。 【鑑賞】病床にあった子規が、静まり返った深夜に秋の終わりを実感している句です。「ともしびともす」というリズミカルでありながらも静寂を感じさせる言葉遊びの中に、去りゆく季節を一人で見送る深い寂寥感と、命の時間を愛おしむような温かみが同居しています。
九月尽五臓にひびく雨の音
飯田蛇笏【現代語訳】九月が尽きようとする今日、外に降りしきる雨の音が、私の身体の五臓六腑にまで重く冷たく響き渡るようだ。 【鑑賞】秋の終わりに降る冷たい雨の音を、単なる聴覚的な風景としてではなく、自身の身体全体(五臓)で受け止めている凄みのある一句です。蛇笏らしい重厚な調べで、季節の移ろいが人間の心身に与える強い影響力を表現しています。
海に出て凩となる九月尽
阿波野青畝【現代語訳】九月の終わりを告げる風が、陸から海へと吹き抜けていき、広い海上でついに冷たい木枯らし(凩)へと姿を変えていく。 【鑑賞】「九月尽」という秋の最後の日を境にして、吹く風が「秋の風」から「冬の木枯らし(凩)」へと劇的に変化していく様子を、海という壮大な空間を使ってダイナミックに描き出しています。季節が冬へと完全に切り替わる瞬間を捉えた鮮烈な名句です。

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