木の実時雨
autumn 天文

木の実時雨

このみしぐれ

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意味・由来

木の実時雨(このみしぐれ)」とは、秋が深まり冷え込む頃、山野の木々からどんぐりやしいの実、トチの実などが、まるで時雨(にわか雨)が降るようにパラパラと音を立てて落ちる様子を表した言葉です。実際の雨ではないものの、乾いた実が葉や地面に当たる音が、まるで静かな雨のように聞こえることから、この風雅な名前がつけられました。晩秋の山林が持つ特有の静けさと、その中に響く微細な「音」に着目した、日本人の繊細な美意識を感じさせる季語です。

この季語で詠むコツ

この季語の主役は「音」です。実際に実が当たっている様子を目で追うだけでなく、耳に聞こえてくる音の響きや、その音によって際立つ周囲の「静けさ」を意識して詠むと効果的です。また、「時雨」という見立てを利用して、身体がその音に「濡れる」ような感覚を比喩的に表現したり、落ちてくる実の硬さや冷たさ、踏みしめる足元の感触などの触覚的なアプローチを取り入れるのも良いでしょう。

相性のいい言葉・取り合わせ

  • 空間を表す言葉: 山寺、古道、杉林、谷、静寂、人影(ひとかげ)
  • 感覚・状態を表す言葉: 乾いた風、冷たさ、静まる、包まれる、濡るるがごとき
  • 動作: 歩む、佇む、耳を澄ます、立ち止まる

木の実時雨」の俳句例 (3件)

木の実時雨風なき杉のしづまりに
飯田蛇笏【現代語訳】風もない杉林の静寂の中に、しめやかに、しかし絶え間なく木の実が落ちる音が響いている。【鑑賞】風がないからこそ、木の実が枝を離れて地面に落ちる微かな「木の実時雨」の音が引き立ちます。杉林の深い静寂が、乾いた実の音をより厳かに引き立てている名句です。
木の実時雨ぬれゆくごとく歩みけり
大野林火【現代語訳】まるで本当の時雨に濡れていくかのように、降り注ぐ木の実の音の中を、身を浸すように歩んでいった。【鑑賞】木の実の落ちる音が、まるで本物の冷たい雨のように身体を包み込みます。五感を使って秋の深まりを贅沢に味わいながら歩む、叙情的な一句です。
木の実時雨ふりしきる日は遠く見ゆ
水原秋桜子【現代語訳】木の実がまるで時雨のようにしきりに降り注ぐ日、遠くの景色がぼんやりと霞んで、いつもより遠くにあるように感じられる。【鑑賞】落ちる木の実の音や気配に包まれることで、かえって視覚的な遠近感が揺らぎ、遠くの山や空がどこか幻想的に遠のいて見えるという、秋桜子らしい絵画的な美しさを持つ句です。

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