菊の酒
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菊の酒

きくのさけ

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意味・由来

「菊の酒(きくのさけ)」とは、陰暦九月九日の「重陽(ちょうよう)の節句」に、不老長寿や無病息災を願って、菊の花びらを浮かべたり、菊を浸したりして飲むお酒のことです。中国の「菊水伝説(菊花から滴る露を飲んで人々が長寿を得たという伝説)」に由来し、日本でも平安時代から宮中の雅な年中行事として定着しました。菊の気高い香りと共に、命を慈しむ秋の温かみを感じさせる風情豊かな季語です。

この季語で詠むコツ

「菊の酒」を詠む際は、単に酒を飲む様子にとどまらず、その一杯に込められた「祈り」や「時間の流れ」を意識することが大切です。例えば、お酒の透明感や盃に浮かぶ黄色い花びらのコントラストといった「色彩や視覚」、あるいは菊が持つ独特の芳香という「嗅覚」に着目すると、描写にリアリティが生まれます。若々しさよりも、どこか落ち着いた大人の静かな時間や、健康への素朴な願いを託すのに適しています。

相性のいい言葉・取り合わせ

・器や動作に関する言葉:「盃(さかずき)」「酌む(くむ)」「干す(ほす)」「浮かべる」 ・時や空間を表す言葉:「夜長(よなが)」「重陽(ちょうよう)」「影」「ともしび」 ・心情や身体を表す言葉:「やせて」「健やか」「長寿」「祈る」

菊の酒」の俳句例 (3件)

菊の酒ただ一むしりむしりけり
小林一茶【現代語訳】菊の酒に浮かべるために、庭の菊をただ一ちぎり、無造作にむしり取ったことだよ。【鑑賞】お行儀よく綺麗に花びらを散らすのではなく、手元にあった菊をパッとむしってお酒に浮かべるという、一茶らしい飾らない野趣と、重陽の節句を気軽に楽しむ庶民的な温もりが生き生きと描かれています。
折りとりて誰にくれんや菊の酒
加賀千代女【現代語訳】美しく咲く菊を折り取って、一体誰に差し上げようか。この菊の酒を一緒に酌み交わす相手を思い浮かべながら。【鑑賞】重陽の日に長寿を願う菊の花を手に、親しい人や愛する人を思いやる優しく細やかな心情が詠まれています。「菊の酒」という季語の格調高さが、相手を思う真摯な心をより一層引き立てています。
菊の酒やせて重陽まのあたり
飯田蛇笏【現代語訳】菊の酒をいただくが、私の身体は病などで痩せ細っており、不老長寿を祈る重陽の節句がまさに目の前に迫っているのだ。【鑑賞】長寿や健康を祝うはずの「菊の酒」と、自身の「やせて」いる現実の体という対比が、秋の寂寥感と共に身に迫る一句です。伝統的なめでたい行事の中に、生の有限性と張り詰めた美学が表現されています。

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