菊の絵櫃
autumn 植物

菊の絵櫃

きくのえひつ

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意味・由来

「菊の絵櫃(きくのえひつ)」とは、菊の花や葉の絵があしらわれた漆塗りなどの櫃(ひつ:衣類や道具を納める木箱)を指す秋の季語です。菊は長寿や無病息災を象徴する高貴な花であり、旧暦九月九日の重陽の節句とも深く結びついています。そのため、菊の絵が描かれた絵櫃には、伝統的な格調高さと静かな気品が漂います。古道具や寺社の宝物、歴史ある旧家の調度品として詠まれることが多く、晩秋の落ち着いた情緒を象徴する季語です。

この季語で詠むコツ

「菊の絵櫃」はモノとしての強い存在感と歴史性を持っています。詠む際には、絵櫃そのものの質感(漆の光沢、塗りの剥げ、描かれた菊の色彩など)や、それが置かれている空間の空気感(蔵の静寂、床の間の陰影、小さな鍵や金具など)に光を当てることが大切です。道具の持つ物語や時間の経過を写し取る意識を持つと、味わい深い句に仕上がります。

相性のいい言葉・取り合わせ

  • 視覚・質感:漆、朱、金泥、小さき鍵、薄ほこり、陽の光
  • 空間・場所:古寺、蔵、奥の院、畳、床の間、旧家
  • 時間・情緒:静寂、寂び、ぬくもり、秋の陰

菊の絵櫃」の俳句例 (3件)

菊の絵櫃高からざるをうつくしく
水原秋桜子【現代語訳】菊の絵が描かれた櫃は、背が高すぎないその奥ゆかしい造形が実に見事である。【鑑賞】調度品としてのバランスや姿形の美しさに目を向けた一句です。高さを抑えた上品な佇まいを「高からざるをうつくしく」と肯定的に捉え、洗練された美的感覚を表現しています。
菊の絵の櫃に菊挿す宿りかな
与謝蕪村【現代語訳】菊の絵が描かれた櫃がある旅先の一室で、その傍らに本物の菊の花を生けて鑑賞していることよ。【鑑賞】箱に描かれた「絵の菊」と、花瓶に挿した「実物の菊」を取り合わせた絵画的な美意識が光る作品です。蕪村らしい風雅で豊かな時間が描かれています。
菊の絵の櫃に小さき鍵ありて
黒柳召波【現代語訳】菊の絵が描かれた立派な櫃には、可愛らしくも古風な小さな鍵が付いている。【鑑賞】絵櫃の繊細なディテールである「小さき鍵」に焦点を絞ることで、箱の中に秘められた歴史や宝物への好奇心を静かに掻き立てます。江戸時代の静謐で気品ある雰囲気が漂う名句です。

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