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「毛黴(けかび)」は、夏特有の湿気と暑さの中で発生するカビの一種で、夏の季語「黴(かび)」の傍題です。古くなった食品や畳、湿った本などに生え、まるで白や灰色の細い毛や綿をかぶったように胞子を伸ばすことからこの名がつきました。梅雨から夏にかけての高温多湿な気候を象徴する現象であり、暮らしの中の湿っぽさや鬱陶しさを表す季語として古くから親しまれています。
毛黴は不快なものとして扱われがちですが、俳句ではその見た目の繊細さや不思議な生命力に目を向けるのがポイントです。ふわふわとした柔らかな毛のような質感、少し目を離した隙に広がっている時間の経過、薄暗い部屋の空気感などを丁寧に観察して描写してみましょう。嫌悪感を直接言葉にするのではなく、静けさや陰影、触覚や視覚の細やかな感覚を五七五に落とし込むと、奥行きのある一句になります。
・古書、古机(無季の日常具・調度品) ・薄暗がり、土間(無季の空間・陰影) ・湿り気、埃(無季の感覚・質感) ・梅雨(夏の季語・時期の重なり) ・台所、箪笥の奥(無季の生活空間)