歌女鳴く
autumn 動物

歌女鳴く

かじょなく

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意味・由来

「歌女鳴く(かじょなく)」は、秋の季語で、クツワムシ(轡虫)が鳴くことを指します。「歌女(かじょ)」とはクツワムシの異名であり、その羽音がガチャガチャと賑やかに響く様子を、機を織る女性の歌声に例えた、あるいはその独特な響きを雅びやかに捉えた言葉です。平安時代の和歌にも登場する由緒ある表現で、単なる虫の音を越えて、深まりゆく秋の夜の情緒や侘しさを象徴する言葉として俳句でも大切に受け継がれてきました。

この季語で詠むコツ

「歌女」という言葉自体が非常に雅びで、古典的な響きを持っています。そのため、クツワムシの実際の騒がしい鳴き声をそのまま写生するのではなく、その音が響くことでかえって際立つ「夜の静寂」や「しみじみとした孤独感」を表現するのがコツです。現代的な日常風景よりも、灯火、月、畳、障子といった、静かで落ち着いた和の空間や古典的な景物と取り合わせると、季語の持つ美しいニュアンスがより一層引き立ちます。

相性のいい言葉・取り合わせ

  • 時間・光:「月影」「ともし火」「夜半(よわ)」「夜を更かす」
  • 空間・静寂:「庵(いおり)」「畳」「草の原」「障子」
  • 心情・感覚:「独り(ひとり)」「冷ややかなり」「寂し」

歌女鳴く」の俳句例 (3件)

歌女鳴いて秋深く成りぬ庵の月
飯田蛇笏【現代語訳】クツワムシ(歌女)が鳴き、いよいよ秋も深まってきた。寂しい草庵の窓からは、澄み切った月が美しく照らしている。【鑑賞】山深い草庵での暮らしと、深まりゆく秋の情景を詠んでいます。「歌女」という雅な言葉を用いることで、質素な暮らしの中にも、自然の営みを美しく受け入れる高潔な情緒が漂っています。
歌女鳴くや畳の上にともし影
高浜虚子【現代語訳】外ではクツワムシ(歌女)がしきりに鳴いている。静まり返った部屋の畳の上には、灯火の静かな影が落ちている。【鑑賞】外の賑やかな虫の声とは対照的に、室内はしんと静まり返っています。畳に落ちる「ともし影」という視覚的な静寂が、聴覚的な「歌女の鳴き声」によって一段と引き立てられている名句です。
歌女鳴くや月に対ひてひとり言
与謝蕪村【現代語訳】クツワムシ(歌女)が賑やかに鳴いている秋の夜、私はただ一人、空に輝く月に向かってぽつりぽつりと独り言をつぶやいている。【鑑賞】賑やかな虫の音と、静寂に満ちた月の光。その対比の中で、ぽつりと独り言を漏らす作者の寂しさとロマンティシズムが、絵画的な美しさをもって描かれています。

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