稲光

稲光

いなびかり

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意味・由来

「稲光(いなびかり)」は、晩夏から秋にかけて夜空を鋭く切り裂く雷の光のことです。「稲妻(いなづま)」とも呼ばれます。古代の人々は、雷光の刺激によって稲が実を結ぶ、つまり稲と光が交わることで実ると信じていたことから「稲の夫(つま)」「稲の光」と名付けられました。激しい閃光でありながら、豊かな実りへの予感や、秋の夜の張り詰めた大気、静寂を想起させる風情ある秋の季語です。

この季語で詠むコツ

一瞬の閃光によって「闇の中に何が浮かび上がったか」「その前後の静けさがどう際立ったか」を捉えるのが最大のポイントです。光そのものの激しさを描写するだけでなく、光に照らされた日常の風景、人物の表情、遠くの山河など、一瞬だけ視界に現れて消える対象に焦点を当てると、劇的で奥行きのある句になります。

相性のいい言葉・取り合わせ

・視覚的な対比を生む言葉(闇、水面、白壁、露、影) ・静寂や聴覚を意識させる言葉(静けさ、夜風、虫の声、寝息) ・生活感や心情を表す言葉(机、遠嶺、ふと、面影)

稲光」の俳句例 (3件)

稲妻や顔のところがうすあかり
三橋敏雄【現代語訳】稲妻が夜空を走った瞬間、闇の中にいる人の顔の部分だけがほんのりと薄明るく浮かび上がった。【鑑賞】強烈な光そのものではなく、反射によっておぼろげに浮かび上がる人間の「顔」の存在感に着目したモダンで印象深い一句です。
稲妻の去年の雨音いまも耳
加藤楸邨【現代語訳】夜空に光る稲妻を見ていると、去年の雷雨の激しい雨音が今もなお耳元に蘇ってくるようだ。【鑑賞】視覚的な稲妻の光を契機として、過去の記憶にある雨音という聴覚的イメージを引き出しています。激しい自然現象が心の奥深い記憶を呼び覚ます様を描いています。
稲妻にこぼるる露のけしきあり
松尾芭蕉【現代語訳】鋭い稲妻が走ったその一瞬、草葉の露が驚いてこぼれ落ちるかのような風情がある。【鑑賞】闇を切り裂く一瞬の閃光と、草葉に宿る繊細な露の対比が見事な名句です。動と静、大自然の力強さと微細な美しさが鮮やかに捉えられています。

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