縑瓜

縑瓜

へちま

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意味・由来

「縑瓜(へちま)」は、一般的には「糸瓜」と書かれるウリ科の蔓性一年草で、秋の季語です。熱帯アジア原産で、江戸時代初期に中国から渡来しました。繊維が発達して布の「縑(かにつ・きぬ)」を思わせる質感を持つことや、かつて「糸瓜(いとうり)」が転訛し、いろは順で「と」が「へ」と「ち」の間にあることから「へちま」と呼ばれるようになったという洒落っ気のある説も知られています。晩秋には実が長く垂れ下がり、実から採れる「へちま水」は咳止めや化粧水として重宝されてきました。

この季語で詠むコツ

ぶらりと力なく垂れ下がるユーモラスな形や、蔓が棚を覆う素朴な生活感、そして晩秋の枯れゆく寂寥感が大きな鑑賞のポイントです。また、病床の咳止め薬として使われた背景から、病や老い、日々の暮らしの哀歓を託して詠まれることも多くあります。「ぶらり」「のんびり」といった長閑な佇まいと、秋の深まりゆく哀感が同居する独特のペーソス(哀愁)を掬い取るように描写してみましょう。

相性のいい言葉・取り合わせ

・形状や動作:「ぶらりと」「垂る(たる)」「揺るる」「太る」 ・生活や道具:「棚」「水」「薬」「庭下駄」「軒端」 ・情景や感情:「日ざし」「夕暮」「静けさ」「病」「老い」

縑瓜」の俳句例 (3件)

糸瓜咲て痰のつまりし仏かな
正岡子規【現代語訳】庭の糸瓜の花が咲いているが、その実から採るへちま水も間に合わず、痰を詰まらせて私は仏になってしまったことだなあ。 【鑑賞】正岡子規が亡くなる前日に遺した絶筆三句のうちの一句です。重い結核の病床で自らの死を客観的かつ諧謔的に見つめ、「もう仏になってしまった」と詠み切った凄みがあります。秋の糸瓜の存在感が子規の命の灯火と重なり合い、胸に迫る名句です。
糸瓜棚日ざしの遠き処より
飯田蛇笏【現代語訳】糸瓜棚に秋の日差しが届いているが、それは遥か遠い空の彼方から射し込んでくるように感じられる。 【鑑賞】甲斐の山懐で暮らした蛇笏らしい、格調高く静謐な句です。糸瓜の大きな葉や垂れ下がる実が影を作る棚に、秋特有の傾いた柔らかな光が差し込む光景を捉えています。自然の深遠さと秋の深まりゆく寂けさが美しく調和しています。
ぶらりと暮れてへちまの水をとる
種田山頭火【現代語訳】ぶらりと当てどなく過ごすうちに一日が暮れていき、夜気配の中でへちまの蔓を切って水を採る。 【鑑賞】自由律俳句を代表する山頭火の句です。へちまの実が「ぶらり」と下がる様子と、自らの気ままで頼りない一日の暮らしぶりが「ぶらりと暮れて」という表現に重ね合わされています。淡々とした日常の所作の中に、孤独と侘しさが滲み出ています。

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