放ち鳥

放ち鳥

はなちどり

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意味・由来

「放ち鳥(はなちどり)」とは、主に旧暦八月十五日に行われる仏教や神道の儀式「放生会(ほうじょうえ)」において、功徳を積むために野や空へ放たれる鳥のことです。捕らえられた生類を自然に帰して殺生を戒めるこの儀式では、雀や鳩などの鳥が放たれます。秋の澄み渡る空へと勢いよく飛び立っていく鳥の姿は、命の尊さや解放感を感じさせるとともに、仏事ならではの厳かさや無常観、どこか哀愁を含んだ秋の風情を漂わせます。

この季語で詠むコツ

「放ち鳥」を詠む際は、鳥が籠から解き放たれて空へと飛び去っていく「動的な瞬間」と、それを見送る人の「静かな心情」のコントラストを描くのが基本です。秋晴れの澄んだ青空や、高澄む秋風といった視覚・触覚の情景と組み合わせることで、解き放たれた命の躍動が一層際立ちます。また、単に自由を喜ぶだけでなく、放たれた鳥が戸惑うように梢に留まる姿や、夕暮れの寂寥感の中に消えていく姿など、放生会の宗教的背景に寄り添った深みのある視点を持つと趣深い句になります。

相性のいい言葉・取り合わせ

  • 空・天候の言葉秋空、秋晴、秋風、秋日和、夕日
  • 動き・感覚を表す言葉:羽音、高嶺(たかね)、梢(こずえ)、見送る、消え入る
  • 寺社・境内の言葉:御手洗、堂塔、鐘の音、石段、木立

放ち鳥」の俳句例 (3件)

放ち鳥梢に迷ふ秋日かな
正岡子規【現代語訳】放生会で空へと放たれた鳥が、自由になった戸惑いからか梢のあたりを迷うように飛んでいる、のどかな秋の日の光の中であることよ。 【鑑賞】放たれた鳥が一目散に飛び去るのではなく、急な自由に戸惑うかのように木々の梢をあちこち迷っている姿を捉えています。柔らかな秋の日差しと、鳥の頼りなげな動きが絶妙に調和した、子規らしい写生眼の光る一句です。
放ち鳥我家に落ちて夕日影
小林一茶【現代語訳】放生会で放たれた鳥が、なぜか我が家の庭に落ちてきて、夕日の光の中にうずくまっている。 【鑑賞】儀式で放たれたはずの鳥が遠くへ飛び去る力もなく、我が家の庭にふらりと舞い落ちてきた様子を詠んでいます。傾く夕日の光が、放たれた小鳥の弱々しさと一茶自身の境遇の侘しさを重ね合わせ、哀愁と慈愛がにじむ名句です。
放ち鳥梢を去つて秋日和
夏目漱石【現代語訳】放生会で解き放たれた鳥が、ひと休みしていた梢を離れて大空へと飛び去っていった、快く晴れ渡った秋晴れの日であることよ。 【鑑賞】鳥が止まっていた梢を離れ、広大な秋の空へと羽ばたいていく瞬間を描いています。「秋日和」の澄明な青空の広がりと、小さく飛び去っていく放ち鳥の軌跡が見事な対比を生み、爽快感と命の開放感を読者に強く印象づけます。

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