雁字
autumn 動物

雁字

がんじ

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意味・由来

「雁字(がんじ)」とは、秋に北の国から日本へ渡ってくる雁(かり)の群れが、夕暮れや月夜の空に「一」の字や「ハ」の字、あるいは「人」の字のように美しく一列に並んで飛ぶ様子を、空に書かれた「文字」に見立てた言葉です。天を白い和紙、雁の群れを筆文字に見立てるという、和歌や古典文学の時代から受け継がれてきた日本人の豊かな美意識を象徴する格調高い季語です。

この季語で詠むコツ

単に雁が飛んでいる姿を描写するだけでなく、「文字」としての形状や、その隊列の変化に着目するのがポイントです。整然と並んでいた列が風に吹かれて乱れたり、徐々に形を変えていったりする様子に、時の移ろいや旅の情愁を重ね合わせてみましょう。また、背景となる空の色(夕焼け、月夜、薄明など)との色彩のコントラストを意識すると、絵画的な美しい一句が生まれます。

相性のいい言葉・取り合わせ

・「一文字」「一筆」「崩る」「乱る」など、書や隊列の動きを表す言葉 ・「天の川」「月」「夕焼け」「秋風」など、空の背景や季節感を強調する言葉 ・「薄墨」「にじむ」「消えゆく」など、はかなさや抒情性を引き立てる言葉

雁字」の俳句例 (3件)

雁字一列秋の風
正岡子規【現代語訳】雁が「一」の字のように一列に並んで飛んでいく、その吹き渡る秋の風の冷涼なことよ。 【鑑賞】子規が詠んだ、極めてシンプルでありながら絵画的な美しさを持つ一句です。「雁字一列」という視覚的な直線と、「秋の風」という触覚的・聴覚的な広がりが対比されています。大空に描かれた一筋の線を、さわやかでどこか寂しげな秋風が吹き抜けていく、澄み切った秋の情景が鮮やかに浮かび上がります。
雁行や一字乱れて一字成る
向井去来【現代語訳】空を行く雁の群れを見上げていると、その一列の形(一の字)が風に乱れたかと思うと、またすぐに別の文字(人やハの字)へと形を整えていくことだ。 【鑑賞】去来の代表作であり、雁字の本質的な面白さを捉えた名句です。「雁行(がんこう)」は雁が列を作って飛ぶこと。飛行する雁の群れが、刻一刻と形を変えながらも、常に美しい規則性を保ち続ける動的な美しさを見事に捉えています。「一字乱れて一字成る」というリズムの良さも魅力です。
雁字いま崩れて月の面に懸る
富安風生【現代語訳】整然と並んで飛んでいた雁の列が、今まさに形を崩しながら、皓々と輝く月の表面を横切っていく。 【鑑賞】夜空に輝く満月を背景に、雁の群れがシルエットとなって通り過ぎる瞬間をドラマチックに切り取った現代の名句です。「雁字」という古典的な見立てを用いながら、それが「月の面に懸る」という極めて視覚的で映画的な構図に昇華されています。古典の美意識と近代的な写生眼が融合した逸品です。

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