吞龍忌

吞龍忌

どんりゅうき

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意味・由来

「吞龍忌(どんりゅうき)」は、秋(旧暦9月3日、新暦10月上旬頃)の季語です。江戸時代初期の浄土宗の僧・呑龍上人(1556〜1623年)の忌日を指します。上人は徳川家康の帰依を受け、上野国新田郡太田(現・群馬県太田市)の大光院の開山となりました。当時、飢饉や重税に苦しむ庶民の間で間引き(嬰児殺害)が行われていたことに心を痛め、捨て子や貧しい家の子を引き取って弟子とし、寺の費用で養育しました。この慈愛に満ちた徳行から「子育て呑龍」「生仏」と慕われ、現在も安産や子育ての守護仏として信仰されています。

この季語で詠むコツ

吞龍上人の慈悲深い人柄を背景に、子どもの無邪気な仕草や健やかな成長を祈る親心のぬくもりを詠み込むのが基本です。大光院をはじめとする寺院の参詣風景、お宮参りのような晴れやかな家族の姿、赤ん坊を抱く腕のあたたかさなどを具体的に切り取ると情感が伝わります。また、上州(群馬県)のからっ風や実りの秋の風景と取り合わせ、風土感豊かな一句に仕上げるのも効果的です。

相性のいい言葉・取り合わせ

  • 親子・生命:赤子、抱き子、産着、母の手、健やか、笑み
  • 寺院・参拝:香煙、絵馬、鐘の音、大光院、門前町
  • 秋の情景:黍の秋(きびのあき)、赤城山、上州風、秋晴、日ざし

吞龍忌」の俳句例 (3件)

呑龍忌太田の宿は黍の秋
水原秋櫻子【現代語訳】呑龍上人の忌日を迎えた太田の宿場町には、黍の穂が実り豊かな秋が訪れている。【鑑賞】上人が開いた大光院がある上州太田(現在の群馬県太田市)の秋の情景を詠んだ句です。民を飢饉から救い命を慈しんだ呑龍忌に、庶民の糧である「黍の実り」を取り合わせることで、北関東の乾いた風土の中に温かな慈愛の気配が満ちる名作です。
呑龍忌子を抱く人の多かりし
阿部みどり女【現代語訳】呑龍忌の寺の境内には、我が子を腕に抱いた大勢の参拝者たちが行き交っていた。【鑑賞】「子育て呑龍」と慕われる上人の忌日法要の賑わいを、平明かつ実感豊かに詠み止めています。境内にあふれる「子を抱く人」たちの姿に焦点を当てることで、幼子の無病息災を願う親心の温もりと尊さが読者の胸に真っ直ぐ伝わってきます。
呑龍忌母子にまじる男親
林翔【現代語訳】呑龍忌の参詣の列には、母親と赤ん坊に交じって、不器用そうに子を見守る父親の姿もあった。【鑑賞】子育て祈願の寺らしく母子で賑わう列の中に、少し照れくさそうに、あるいは誇らしげに加わる「男親」を見出した観察眼が光ります。親が子を想う普遍的な情愛を、日常のさりげない一コマからあたたかく描き出しています。

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