紅染月

紅染月

べにそめづき

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意味・由来

「紅染月(べにそめづき)」は、陰暦八月(現在の九月頃・仲秋)の異称です。木々の葉がうっすらと色づき始め、深まりゆく秋とともに草木が紅に染まっていく季節であることからこのように呼ばれるようになりました。また、かつて紅花を用いて鮮やかな紅色を染め出す時期であったことに由来するという説もあります。単に「秋の月」の美しさを愛でるだけでなく、夜空にかかる清らかな月光と、地上で色づき始める自然のうつろいが溶け合うような、雅やかで情緒豊かな季語です。

この季語で詠むコツ

「月」という文字が入っていますが、月そのものの形や光景に終始するのではなく、「八月という月(時期)」そのものを指す言葉でもあります。そのため、月光の美しさと同時に、初秋から仲秋へ移ろう季節の微細な変化を捉えるのがポイントです。例えば、わずかに色づいた葉先、吹き抜ける風の冷たさ、秋の夜の静けさなど、地上にある具体的な物や色彩と響き合わせることで、言葉の持つ雅な雰囲気を活かしつつ、立体感のある句に仕上がります。

相性のいい言葉・取り合わせ

・色彩を表す語(茜、薄紅、白、夕暮れなど) ・植物・自然の景(梢、萩、薄、露、野分など) ・静寂や陰影を導く言葉(影、夜風、しじま、更くるなど)

紅染月」の俳句例 (3件)

紅染月野分立たむとする夜かな
正岡子規【現代語訳】紅染月と呼ばれる仲秋の今宵、どこか不穏に野分(台風)が吹き荒れようとしている夜であることだ。 【鑑賞】仲秋の雅やかな季節感を表す「紅染月」と、荒々しい風が兆す「野分」の前兆を対比させた句です。色づく季節の美しさの裏に潜む、自然の厳しさと秋の深まりへの緊張感が巧みに詠み込まれています。
紅染月遠山白く夜も更けぬ
大須賀乙字【現代語訳】紅染月の澄んだ光のなか、遠くの山並みが白く浮かび上がり、静かに夜が更けてゆく。 【鑑賞】草木が染まりゆく季節の夜気を「遠山白く」という清澄な色彩で捉えています。紅染月がもたらす冴えた光と夜の静けさが、山々の稜線を美しく際立たせている名景です。
紅染月峰の嵐のやみにけり
飯田蛇笏【現代語訳】紅染月の光が照らすなか、山峰を激しく吹き荒れていた嵐がいつの間にか静まったことだ。 【鑑賞】激しい山根の嵐がやんだ後の、静寂と澄み渡る月光を描いた重厚な句です。「紅染月」という雅味のある季語を用いることで、嵐の去った後の冷涼で透き通るような秋の夜空が一層印象づけられます。

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