網掛

網掛

あがけ

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意味・由来

「網掛(あがけ)」とは、秋に渡ってくる鴨や鶫(つぐみ)などの野鳥を捕らえるため、水辺や山野の鳥道(鳥の通り道)に霞網などの網を仕掛けること、あるいはその仕掛けそのものを指す季語です。古くから鳥猟は秋の深まりとともに解禁され、山里や湖沼の風物詩として親しまれてきました。鳥を傷つけずに捕獲する伝統的な猟法であり、秋の冷え込む早朝や夕暮れの緊張感、野趣あふれる情景を想起させる言葉です。

この季語で詠むコツ

「網掛」を詠む際は、鳥が飛び交う時間帯である「夜明けの薄明かり」や「夕暮れ」、そして肌を刺すような「朝の冷気(朝寒・冷やか)」などを描写すると、現場の張り詰めた空気感が際立ちます。実際に鳥を捕らえる激しい動きよりも、網を張り終えて息を潜めて鳥を待つ静寂や、夜明け前の静けさに焦点を当てると、秋らしい深みのある情緒的な一句になります。

相性のいい言葉・取り合わせ

・時間・光:夜明け、朝ぼらけ、薄明かり、夕暮れ、残月 ・天候・気候:朝寒(あさざむ)、夜寒(よざむ)、朝霧、露、冷やか ・場所・情景:入江、沼、葦原、雑木林、尾根、鳥道

網掛」の俳句例 (3件)

網掛けて鳥待つほどの寒さかな
高浜虚子【現代語訳】網を仕掛けてじっと鳥を待つ、その間の一瞬一瞬に身にしみるような寒さであることよ。 【鑑賞】鳥を驚かせないように物音ひとつ立てず身を潜めて待つ時間の、研ぎ澄まされた寒冷感を詠んだ句です。鳥猟特有の緊張感と秋の深まりによる寒さが一体となって読者に伝わってきます。
網掛や夜明の雲の紅うすし
正岡子規【現代語訳】鳥を捕る網を仕掛けて待っていると、夜明けの空の雲がうっすらと紅色に染まってきた。 【鑑賞】早朝の張り詰めた冷気の中、網を仕掛けて鳥の訪れを静かに待つ情景です。ほの暗い空の雲がわずかに紅色を帯びてくる色彩の描写によって、張り詰めた静寂と夜明けの美しさが鮮やかに捉えられています。
網掛けて待つ間淋しき夜寒かな
正岡子規【現代語訳】網を張り巡らせて鳥を待っている間の、なんと物寂しく冷え込む夜の寒さであろうか。 【鑑賞】夜の帳が下りた野や水辺で、ただ一人仕掛けを見守る時間の孤独と冷気が描かれています。網掛という生活に根ざした営みの中に漂う、秋の深い寂寥感が心に響く作品です。

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