燕去月

燕去月

つばめさりづき

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意味・由来

「燕去月(つばめさりづき)」とは、陰暦八月(現在の8月下旬から10月上旬頃・仲秋)の異称です。春に南方から日本へと渡ってきて子育てを終えたツバメたちが、再び南のあたたかい島々へと群れをなして旅立っていく月であることから名付けられました。単に月日を表すだけでなく、空を見上げて渡り鳥の別れを惜しむ、どこか哀愁と爽やかさが入り混じった季節感を漂わせる風情ある時候の季語です。

この季語で詠むコツ

「燕」という生き物の名前が入っていますが、分類としては「時候」の季語になります。そのため、必ずしも目の前に飛んでいるツバメの姿を描く必要はありません。ツバメたちが去った後のぽっかりと空いた軒下の「古巣」、あるいは高く澄み渡った秋の青空、少し肌寒さを感じ始めた風など、ツバメの「不在」を通して秋の深まりや寂寥感を表現するのが効果的です。また、去りゆく鳥を見送る旅情や人生の別れと重ねて詠むのも味わい深くなります。

相性のいい言葉・取り合わせ

・空や雲に関する言葉(「秋晴」「夕茜」「白雲」「高空」など) ・静けさや余韻を表す言葉(「古巣」「日暮」「風音」「もぬけ」など) ・生活や港・海の情景(「潮騒」「軒端」「旅」「岬」など)

燕去月」の俳句例 (3件)

燕去月古巣ばかりとなりにけり
正岡子規【現代語訳】ツバメが南へ去っていく八月となり、見上げる軒先にはもぬけの殻となった古巣ばかりが残されていることだなあ。 【鑑賞】春から夏にかけての賑やかな子育ての時期が過ぎ、静まり返った軒下の古巣を見つめることで、秋の深まりと拭えない寂しさをシンプルかつ的確に描き出した一句です。
燕去月潮騒遠き日和かな
飯田蛇笏【現代語訳】ツバメが海を越えて去っていくこの月、波の音が遥か遠くに心地よく響く穏やかな秋晴れの日であることよ。 【鑑賞】ツバメが旅立った広大な海原を遠くに意識しながら、澄み渡る秋の日の静けさと長閑さを格調高く捉えています。寄せては返す潮騒に、去りゆく季節の余情が滲みます。
燕去月空を忘るる日もあらむ
三橋鷹女【現代語訳】ツバメたちが旅立っていく月。今はあんなに見上げているこの空を、やがて忘れ果ててしまう日も訪れるのだろうか。 【鑑賞】渡り去るツバメを見送る視線から、自らの心象風景へと深く沈潜していく鷹女らしい鋭い感性の一句です。高澄む秋空への憧憬と、命のはかなさや忘却の孤独を同時に孕んでいます。

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