棚経

棚経

たなぎょう

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意味・由来

「棚経(たなぎょう)」とは、お盆の期間に菩提寺の僧侶が檀家を一軒一軒巡り、先祖の霊を迎えるために設けた精霊棚(盆棚)の前で読経することを指します。旧暦7月(現在は8月中旬が多い)の初秋の季語です。夏の厳しい暑さが残る中、僧侶は袈裟をまとい、汗を流しながら家々を回ります。迎える家々ではお布施やお茶を用意して待ち、僧侶が到着すると静かに手を合わせます。お盆ならではの敬虔な信仰心と、夏の終わりの生活感が溶け合い、どこか親しみやすさと哀愁を感じさせる季語です。

この季語で詠むコツ

読経そのものの厳かさを詠むのも良いですが、棚経にまつわる「前後の慌ただしさ」や「生活の匂い」を切り取ると生き生きとした句になります。たとえば、炎天下をバイクや自転車で駆け抜ける僧侶の汗、走り去る音、僧侶が立ち去った後のほっとした脱力感や部屋に残る線香の匂いなど、五感を生かした情景描写が効果的です。また、迎える家族や子ども、ペットの様子を描くことで、日常と非日常の交差をユーモラスに、あるいは温かく表現できます。

相性のいい言葉・取り合わせ

・音や気配:りんの音、バイクの音、下駄の音、静けさ、足音 ・夏の余名残り:汗、団扇、冷茶、夕立、すだれ、風鈴 ・盆の風物:盆棚、蓮の葉、線香の煙、精霊馬、ほおずき

棚経」の俳句例 (3件)

棚経や犬も心得て吠もせず
小林一茶【現代語訳】お盆の棚経をあげにお坊さんがやって来たが、普段はよく吠える飼い犬もそれを心得ているのか、吠えようともしない。 【鑑賞】僧侶の来訪に普段とは違う家の雰囲気を察知したのか、おとなしくしている犬の様子を捉えた一茶らしいユーモアと愛情あふれる一句です。日常の観察眼から生活感あふれるお盆の情景を描き出しています。
棚経のあとへ夕立来りけり
正岡子規【現代語訳】お坊さんが棚経をあげて立ち去ったすぐあとに、激しい夕立が降ってきたことだ。 【鑑賞】僧侶の慌ただしい巡回と、ちょうどその後に訪れた激しい夕立のタイミングの妙を写生しています。読経の緊張感が解けたあとの涼しさと、夏の終わり特有の天気の急変が鮮やかに目に浮かびます。
棚経や僧をつつしむ下戸上戸
与謝蕪村【現代語訳】棚経をあげに僧侶が来られたので、酒を飲めない者も酒好きな者も、みな一様に襟を正して畏まっている。 【鑑賞】普段はにぎやかに酒を飲んでいる者も、酒を飲まない者も、お盆の棚経の時ばかりは行儀よく居住まいを正している様子を詠んでいます。人々の日常と宗教的行事が交わる瞬間の心理を巧みにとらえています。

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