台風裡

台風裡

たいふうり

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意味・由来

「台風裡(たいふうり)」とは、猛烈な台風の吹き荒れる「ただ中」や「渦中」に身を置いている状態を表す秋の季語です。「裡」は「うち(内部)」を意味する漢字で、単に「台風」という自然現象そのものを指すだけでなく、嵐に完全に包囲され、その圧倒的な猛威のただ中に自分が存在しているという実感を強調するニュアンスを持っています。秋に日本列島を襲う大型の暴風雨の脅威と、それに翻弄される人間の心理が色濃く反映される言葉です。

この季語で詠むコツ

「台風裡」を詠む際は、外の凄まじい風雨の描写だけに終わらせず、その渦中にいる「人間の内面」や「室内の静寂・緊迫感」との対比を描くのが大きなコツです。嵐の轟音に囲まれることで、かえって自己の存在や日常の脆さが際立ちます。あえて室内での微細な動作や心理の動き、孤絶感をクローズアップすることで、季語が持つ空間の広がりと激しさが逆説的に引き立ちます。

相性のいい言葉・取り合わせ

・室内や静寂に関する言葉(灯火、書物、机、息づかい、闇) ・五感に訴える言葉(轟く、軋む、閉ざす、揺らぐ) ・人間の心理や関係性に関する言葉(孤り、対座、祈り、眠り)

台風裡」の俳句例 (3件)

台風裡わが身を置きて書を読めり
日野草城【現代語訳】吹き荒れる台風の激しい渦中にわが身を置きながら、私はただ静かに書物を読んでいる。 【鑑賞】外では天地を揺るがすような暴風雨が吹き荒れているのに対し、作者は部屋の中でただひたすら読書に没頭しています。外の動乱と内の静寂の対比が鮮やかで、自然の猛威に呑まれながらも精神の自律を保とうとする知的な姿勢が際立つ名句です。
台風裡妻を離れて坐りけり
西東三鬼【現代語訳】台風の吹き荒れるただ中、私は妻と少し距離を置いて、一人静かに坐っている。 【鑑賞】嵐という非常事態に直面したとき、身を寄せ合うのではなく、あえて妻から少し離れて坐るという距離感に、人間関係の複雑な心理や孤独感が描かれています。吹き荒れる暴風雨が、かえって二人の間の沈黙と緊張感を浮き彫りにしています。
台風裡いのちの息を深く吸ふ
中村草田男【現代語訳】台風が猛威を振るう渦中にあって、私は生きている実感とともに深く息を吸い込む。 【鑑賞】自然の圧倒的な破壊力とエネルギーに包囲されることで、かえって自らの「いのち」の鼓動や存在を強く意識した瞬間を捉えています。「深く吸ふ」という能動的な身体感覚を通して、嵐に立ち向かう人間の強い生命力が立ち現れてきます。

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