椎拾う

椎拾う

しいひろう

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意味・由来\n「椎拾う(しいひろう)」は、秋に熟して落ちた椎の木(ツブラジイやスダジイ)の実を拾い集める情景を指す晩秋の季語です。椎の実はドングリの一種ですが、渋みやアクが少なく、炒るだけで香ばしく美味しく食べられるため、古くから人々の身近な秋の恵みとして親しまれてきました。山道や神社の境内、屋敷林などで、足元に散らばる小さな実を一心に探して拾う姿には、どこか素朴で懐かしい季節の情緒が漂います。\n\n### この季語で詠むコツ\n「椎拾う」という行為には、腰をかがめる動作や、落ち葉をかき分ける手の動き、掌にたまっていく実の重みや冷たさなど、豊かな身体感覚が伴います。また、木の上からパラパラと実が落ちてくる微細な音、子どもたちの楽しげな声、森の静けさなど、聴覚的な情景と組み合わせると、秋の深まりが鮮やかに立ち上がります。ただ「拾った」という報告にとどまらず、拾う人の表情や手のぬくもり、周囲の光の様子などを具体的に描くのがコツです。\n\n### 相性のいい言葉・取り合わせ\n- 動作・感覚の言葉:しゃがむ、手のひら、袂(たもと)、ポケット、音、落ち葉、冷たし\n- 場所を表す言葉:神社、境内、鎮守の森、裏山、古道、庭先\n- 人物・情景:童(わらべ)、母子、日差し、夕暮れ、小鳥の影

椎拾う」の俳句例 (3件)

椎拾ふて子に持たせたる袂かな
正岡子規【現代語訳】地面に落ちている椎の実を拾っては、着物の袂を袋代わりにして子どもに持たせてやったことだ。\n【鑑賞】器や袋を用意していなかったものの、思いがけずたくさんの実を見つけて夢中になり、子どもの着物の袂を膨らませていく親子の情景です。ずっしりと重くなっていく袂の感触から、秋の実りの豊かさと親子の微笑ましい触れ合いが伝わってきます。
椎拾ふ子供のあとを拾ひけり
高浜虚子【現代語訳】子どもたちが椎の実を拾い集めながら通り過ぎたそのあとを、自分もついて歩きながら椎の実を拾ったことだ。\n【鑑賞】子どもたちが夢中で拾い尽くしたように見えても、まだ見落とされた実が落ち葉の間に残っています。子どもたちの無邪気な後ろ姿を微笑ましく見守りつつ、大人もまた童心に帰って椎を拾うという、穏やかで温かみのある日常の一コマが巧みに捉えられています。
椎拾ふてのちの手の平冷えにけり
能村登四郎【現代語訳】椎の実を夢中で拾い集め終わったあと、ふと気づくと自分の手のひらがすっかり冷たくなっていた。\n【鑑賞】落ち葉や湿った土に触れながら椎の実を拾っている間は無我夢中だったものの、立ち止まった瞬間に手の冷たさを自覚する感覚を描いています。晩秋の澄んだ冷気と、実りの収穫の静かな余韻が「手の平の冷え」という具体的な触覚を通して鮮やかに表現されています。

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