狭霧

狭霧

さぎり

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意味・由来

「狭霧(さぎり)」とは、秋に立ち込める「霧」の美称・雅称です。「さ」は語調を整えたり、美しさや神聖さを添えたりする接頭語で、古今和歌集などの古典和歌の時代から愛用されてきました。春の「霞(かすみ)」に対して秋は「霧(きり)」とされますが、その中でも「狭霧」は、山あいや水辺にたなびく薄い霧、あるいはどこか幻想的で幽玄な趣を持つ霧の情景に対して使われます。言葉そのものに雅やかな詩情が宿っているのが大きな特徴です。

この季語で詠むコツ

「狭霧」という言葉自体に深い叙情性があるため、単なる風景の説明に終わらせず、霧によって変化する「距離感」「光の加減」「輪郭のぼやけ」などに着目して詠むのがポイントです。すぐ近くのものが遠く感じられたり、霧の奥からかすかに鐘の音や水の音が響いてきたりといった、五感を通じた表現を取り入れると効果的です。また、少し古風な響きを持つ季語なので、俗っぽい日常語を合わせるよりは、落ち着いた品格のある言葉と調和させると季語の美しさが引き立ちます。

相性のいい言葉・取り合わせ

  • 地形・場所:山峡(やまかい)、入江、湖、古道、霊峰、水面
  • 視覚・光:ほの白し、晴れゆく、夕日、街の灯、影
  • 動作・状態:こむ(籠む)、立つ、覆ふ、隠す、晴る

狭霧」の俳句例 (3件)

狭霧たつや百歩の山を遠くして
与謝蕪村【現代語訳】秋の狭霧が立ちこめて、ほんの百歩ほどの距離にあるはずの山が、はるか遠くにあるように感じられる。【鑑賞】立ち込める霧によって景色の遠近感が狂い、間近にある山が幽玄の世界へ遠のいていくような感覚を見事に表現した句です。「百歩の山」という具体的な近さと「遠くして」という心理的な距離感の対比が、狭霧の深さと幻想的な美しさを際立たせています。
狭霧こめて高野の町は燈をともす
松本たかし【現代語訳】秋の狭霧が深く立ちこめて、聖地高野山の町には夕暮れの明かりが灯されていく。【鑑賞】深い山霧に包まれた高野山の静寂と神聖な空気を捉えた名句です。「狭霧」という雅やかな季語が霊場の雰囲気に重なり、白く冷たい霧の奥にぽつぽつと灯る明かりが、静かな温もりと祈りの気配を醸し出しています。
狭霧立ちて夕日さしたる紅葉かな
飯田蛇笏【現代語訳】狭霧が立ちこめる山あいに、ふと夕日が差し込んで色づいた紅葉を照らし出している。【鑑賞】白く立ちこめる冷涼な狭霧と、夕日に照らされて鮮やかに浮かび上がる紅葉の色彩のコントラストが極めて格調高い一句です。霧と光が織りなす一瞬のドラマを通じて、深まりゆく秋の山景の美しさを堂々と詠み上げています。

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