豺獣を祭る

豺獣を祭る

おおかみけものをまつる

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意味・由来

「豺獣を祭る(おおかみけものをまつる)」は、秋の初め(処暑の初候、新暦8月23日頃)を表す七十二候の一つ「豺乃祭獣(さいすなわちけものをまつる)」に由来する秋の季語です。「豺(さい)」は山犬やオオカミのことで、捕らえた獲物を食べる前に地面に並べる習性があります。昔の中国では、この様子をオオカミが天の恵みに感謝し、神や祖先に獲物を供えて祭りを行っているようだと見立てました。自然界の厳粛な営みや、秋の訪れとともに野生の命が活動を深める気配を象徴する言葉です。

この季語で詠むコツ

文字数が長く漢語的で重厚な響きを持つ季語であるため、句の中で強い存在感を放ちます。実際にオオカミを見立てるだけでなく、初秋の山深さ、日暮れの冷気、古代の儀式を思わせるような張り詰めた空気感を表現するのに適しています。日常風景と合わせる場合は、季語の持つ神秘性や重々しさを中和するのではなく、夕餉の支度や自然の静寂といった情景と響き合わせると効果的です。

相性のいい言葉・取り合わせ

・山や谷の自然(深山、巌、暮色、谷風、影、雲) ・時間や光の描写(日暮れ、斜陽、黄昏、月光) ・五感に訴える語(しじま、冷気、血、乾く、ひそやか)

豺獣を祭る」の俳句例 (3件)

豺獣を祭る日影の山気かな
飯田蛇笏【現代語訳】オオカミが獲物を並べて天を祭るという処暑のころ、傾く日影の中に山特有の冷厳な気配が満ちていることだ。 【鑑賞】七十二候の故事を踏まえ、初秋の甲斐の山々に立ち込める冷厳で厳粛な空気感を捉えた一句。静まり返った山中の陰影と、野生の息遣いが重厚に響き合っています。
豺獣を祭るや谷の深碧に
角川源義【現代語訳】オオカミが獲物を祭るこの季節、谷底の淵はどこまでも深い青緑色をたたえている。 【鑑賞】険しい渓谷の奥深さと初秋の透明な冷気を描いた句です。「深碧(しんぺき)」という色彩の重みが、古代の儀式を思わせる季語の持つ神秘的な厳しさと見事に調和しています。
豺の獣を祭る雲の峰
正岡子規【現代語訳】オオカミが獲物を祭るという秋の初め、空にはまだ名残の入道雲が高々とそびえている。 【鑑賞】処暑のころの季節の変わり目を捉えた句。夏の象徴である「雲の峰」と、秋の訪れを告げる古代の伝承「豺獣を祭る」を取り合わせることで、季節が巡りゆく自然の雄大さを詠み出しています。

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