落鰻

落鰻

おちうなぎ

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意味・由来

「落鰻(おちうなぎ)」とは、秋の彼岸を過ぎる頃から初冬にかけて、産卵のために川を下って海へと向かう鰻のことです。「下り鰻(くだりうなぎ)」とも呼ばれます。春から夏にかけて川や湖沼で十分に栄養を蓄えた鰻は、銀黒色に輝き脂が乗っています。川の増水や夜の闇に乗じて一気に下流を目指すその生態から、川瀬に「簗(やな)」を仕掛けて一網打尽にする漁が古くから行われてきました。自然の摂理と季節の推移、川の生業が凝縮された晩秋の季語です。

この季語で詠むコツ

落鰻を詠む際は、鰻そのものの姿を直接描写するだけでなく、鰻が下っていく「環境」や「気配」を描くのが効果的です。秋の長雨による川の濁り、冷え込む夜の気配、簗を打つ水音、捕獲する漁師の手元の灯りなど、視覚や聴覚を研ぎ澄ませた情景描写と組み合わせると、秋の深まりや命の旅立ちの哀感が鮮やかに立ち上がります。

相性のいい言葉・取り合わせ

  • 川・水に関わる言葉(簗、早瀬、夜水、濁り水、川瀬、淵)
  • 秋の気象・光に関わる言葉(秋霖、夜冷え、月光、篝火、暗がり)
  • 感覚・動作に関わる言葉(手ざわり、ぬめり、落ち来る、逃す、ひそかに)

落鰻」の俳句例 (3件)

落鰻川一すぢの昏さかな
長谷川双魚【現代語訳】海へ下る落鰻の気配を宿し、夜の川が一筋の深い暗がりとなって流れていることだ。 【鑑賞】川面そのものは夜の闇と同化して見えにくいものの、一本の黒い帯となって流れる川に、本能に従って海へと向かう落鰻の蠢きが潜んでいる感覚を見事に捉えています。「一すぢの昏さ」という端的な把握が、秋の夜の凄愴な静けさを際立たせています。
落鰻簗に落ち来る音のして
清崎敏郎【現代語訳】海を目指して下ってきた落鰻が、仕掛けられた簗に落ちて跳ねる音が聞こえて。 【鑑賞】暗闇の中で行われる簗漁の様子を、聴覚のみに焦点を絞って捉えた写生句です。水音の中に混じる、鰻が簗の竹すだれに落ちて跳ねる確かな音。その一瞬の音に、川の冷たさと獲物を待ち構える人の息づかいがリアルに伝わってきます。
落鰻捕へて暗き手のひらかな
桂信子【現代語訳】川を下る落鰻を捕まえた手のひらは、夜の闇の中で黒々と濡れている。 【鑑賞】捕らえた落鰻のぬめりや冷たさ、そして力強い生命の脈動が「暗き手のひら」という触覚と視覚の融合した表現に凝縮されています。生命を直に受け止めた瞬間の静かな緊張感と、秋の夜の冷え冷えとした空気感が印象深い名句です。

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