ねむた流し

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ねむたながし

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意味・由来

「ねむた流し(ねぶた流し・眠り流し)」は、初秋(旧暦7月7日の七夕頃、現在では8月上旬)に行われる東北地方などを中心とした伝統行事です。夏の過酷な農作業の妨げとなる激しい睡魔や怠け心、病魔を「悪霊」と見立て、藁人形や灯籠、笹竹などに託して川や海へ流し去る「睡魔祓い(すいまばらい)」に由来します。国の重要無形民俗文化財である青森の「ねぶた祭」や秋田の「竿燈(かんとう)まつり」の最終日に行われる灯籠流し・海上運行がその代表的な姿です。燃え盛る灯籠が夜の暗い波に揺られながら遠ざかる光景は、祭の狂乱の終わりと、実りの秋を迎える前の厳粛な祈りを感じさせます。

この季語で詠むコツ

ねむた流しを詠む際は、「光と闇」「火と水」「動から静」という鮮やかなコントラストを意識するのが最大のコツです。直前まで響いていた太鼓や笛の喧騒、人々の熱気がふっと静まり返り、暗黒の海や川面へ灯火が吸い込まれていく哀感や寂寥感に焦点を当ててみましょう。また、単に祭りの光景を描くだけでなく、自らの内にある「眠気」や「倦怠感」「心の迷い」を託して詠むことで、主観と情景が一体となった深みのある一句に仕上がります。

相性のいい言葉・取り合わせ

・光と闇を表す語:「灯籠(とうろう)」「火の粉」「暗潮」「夜の海」「黒き波」 ・静けさや余韻を表す語:「遠ざかる」「押し出す」「水音」「静寂」「消えゆく」 ・情感を添える語:「祈り」「惜別」「見送る」「眠り」「津軽」

ねむた流し」の俳句例 (3件)

ねぶり流し舟に一と声烏かな
小林一茶【現代語訳】眠り流しの舟が水面を進んでいくと、明かりに驚いたのか、一羽のカラスが鋭い声を上げて鳴き去っていった。【鑑賞】「ねぶり流し」は「ねむた流し」の古名・方言形です。夜明け前あるいは夕暮れの薄暗がりの中、水面を静かに進む舟と、突如響くカラスの一声の対比が印象的です。眠気を祓う儀礼の厳かな空気感に、自然の生きものの気配が溶け込み、哀愁と静けさを醸し出しています。
ねぶた流す火と水相剋せる暗さ
成田千空【現代語訳】ねぶたを流す夜の海では、激しく燃え盛る火と冷たい水とが互いにせめぎ合い、そのために周囲の闇がいっそう深く暗く感じられる。【鑑賞】青森出身の作者による、ねぶた流しの本質を鋭く抉り出した名句です。「火と水相剋」という緊迫した言葉を用いることで、華やかな祭りの熱狂が夜の深淵な海へと呑まれていく凄絶な暗さと厳粛さを圧倒的な迫力で描き出しています。
ねぶた流す闇をひらいて波頭
佐藤鬼房【現代語訳】ねぶたが海へと流されてゆく。その漆黒の闇を切り裂くように、白い波頭が泡立ち立っている。【鑑賞】東北の風土に根ざした句を数多く残した鬼房の一句です。夜の海に灯籠を流す儀礼のさなか、波が白く砕ける瞬間を「闇をひらく」と捉えた動的な描写が鮮やかです。ねぶたの火影と波の白さ、そして背景に横たわる果てしない北国の暗黒海が鮮烈なコントラストを描いています。

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