投松明

投松明

なげたいまつ

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意味・由来

「投松明(なげたいまつ)」とは、初秋に行われる火祭りの神事・行事で、点火した小松明に紐をつけ、振り回しながら高所に投げ上げる風習、またその投げられる松明そのものを指す季語です。代表的なものとして、京都の洛北(花背、雲ケ畑、広河原、久多など)に伝わる伝統行事「松上げ(まつあげ)」が広く知られています。愛宕信仰に基づく火難除け(火伏せ)や、お盆の精霊を送る送り火の意を込めて行われます。高さ数十メートルにもおよぶ巨大な一本杉の先端に設けられた「傘(大笠)」をめがけ、人々が一斉に火のついた松明を放り投げ、見事に傘に命中して火柱が夜空を焦がすさまは勇壮そのものです。

この季語で詠むコツ

山深い漆黒の闇と、激しく舞い散る紅蓮の炎という「明暗・色彩のコントラスト」を捉えるのが基本です。松明が放物線を描いて闇夜を切り裂く動的な軌跡、火の粉が雨のように降り注ぐ視覚的迫力、さらには松の燃える匂いやパチパチとはぜる音、観衆や投げ手たちの熱気を五感豊かに詠み込むと臨場感が高まります。ただ炎の激しさを追うだけでなく、神聖な祈りや祭りの後の急な静けさに焦点を当てることで、秋の訪れと深い哀愁を滲ませることができます。

相性のいい言葉・取り合わせ

・空間・色彩を表す語(漆黒、夜空、山峡、紅蓮、放物線、火の粉) ・動き・状態を表す語(裂く、舞う、吸はるる、落ち散る、熄む) ・祭事・祈りを表す語(男衆、喚声、火伏せ、祈り、静寂)

投松明」の俳句例 (3件)

投松明天に吸はるるごとくなり
有馬朗人【現代語訳】投げ上げられた松明が、まるで夜空そのものに吸い込まれていくかのように高く舞い上がっている。 【鑑賞】闇深く高い空に向かって放たれた松明の、重力を忘れさせるような浮遊感と神聖な勢いを「天に吸はるるごとく」と鮮烈に表現した一句です。物理学者でもあった作者らしい、空間と軌道の美しさを捉えた眼差しが光ります。
投松明闇をあふるる火なりけり
桂信子【現代語訳】放り投げられた松明が、漆黒の闇を溢れんばかりに焦がし照らし出す火であることよ。 【鑑賞】山峡の圧倒的な暗闇と、それを圧するように飛び交う無数の炎の奔流を捉えています。単に火が燃えているのではなく、闇の器から火が「あふれる」と捉えた把握により、火祭りの持つ猛烈なエネルギーと幻想的な情景がくっきりと浮かび上がります。
投松明宙に散りつつ闇深し
皆川盤水【現代語訳】放たれた松明が空中で火の粉を散らしながら消えていき、そのあとの闇はいっそう深く感じられる。 【鑑賞】火の華やかさそのものよりも、火が飛び散ることでかえって際立つ夜空の闇の深さに着目した句です。一瞬の激しい炎の輝きと、それを取り巻く悠久の闇の静寂という対比が、秋の夜の厳粛な趣を深く醸し出しています。

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