九孔の針
autumn 生活

九孔の針

きゅうこうのはり

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意味・由来\n「九孔の針(きゅうこうのはり)」は、陰暦七月七日の七夕(乞巧奠/きこうでん)の夜、針仕事や手芸の上達を祈る儀式に用いられた特別な針のことです。一つの針に九つの穴が縦に並んでいるもの、あるいは九本の針を並べたものに、月明かりや星明かりを頼りに五色の糸を通すことができれば、裁縫の腕が上達すると信じられていました。古代中国の習俗が日本に伝わり、宮中行事として定着した、非常に優美で幻想的な初秋の季語です。\n\n### この季語で詠むコツ\n針穴という極めてミクロで繊細な世界と、夜空に広がる天の川や月という壮大なマクロの宇宙との対比を意識すると、奥行きのある美しい句になります。月下の静けさの中で、息を詰めて細い糸を通そうとする手元の緊張感や、星明かりに光る針の鋭い輝きを描写するのがポイントです。また、手芸の上達を願う女性のひたむきな心や、七夕ならではの恋情を重ねて詠むのにも適しています。\n\n### 相性のいい言葉・取り合わせ\n- 天体・夜空:天の川(銀河)、星合、星の秋、宵月、月明かり\n- 道具・動作:五色の糸、絹糸、通す、指先、手元、灯影(ほかげ)\n- 質感・心情:細やか、かすか、願い、祈り、静寂

九孔の針」の俳句例 (3件)

九孔の針に天の川とほりけり
与謝蕪村【現代語訳】七夕の夜、九つの穴が並ぶ針に五色の糸を通そうと月夜にかざすと、まるで夜空に広がる天の川そのものが穴を通ったかのように見えたことだ。【鑑賞】手元の極小の「針の穴」と、天上に広がる壮大な「天の川」を一瞬で結びつけた、蕪村らしいダイナミックかつ絵画的な名句です。細い穴を星の光が貫いたかのような幻想美が際立ちます。
九孔の針に糸とほす宵の月
正岡子規【現代語訳】七夕の宵の月明かりのもとで、手芸の上達を祈りながら九孔の針に細い糸を通している。【鑑賞】七夕の行事の一コマを素直かつ写実的に捉えた句です。「宵の月」の柔らかく淡い光が、針穴に糸を通そうと集中する手元を照らし出し、初秋の涼やかな夜の静寂と風情を端正に描き出しています。
九孔の針に月さす七夕かな
宝井其角【現代語訳】祭壇に供えられた九孔の針に、冴えざえとした月光が差し込んでいる、いかにも七夕の夜らしい雅な情景であることよ。【鑑賞】乞巧奠の厳かで風雅な夜の気配を「月さす」というシンプルな描写で引き締めています。銀色に光る細い針と、空から降り注ぐ清らかな月光の照応が美しく、七夕の伝統と趣向を鮮やかに表現しています。

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