今日の菊
autumn 時候

今日の菊

きょうのきく

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意味・由来

「今日の菊(きょうのきく)」は、陰暦九月九日の「重陽(ちょうよう)の節句」の当日に咲く、あるいは飾られる菊の花を指す季語です。古代中国の陰陽思想において、奇数は「陽」の数とされ、一桁の最大数である「九」が重なる九月九日は「重陽」として大変めでたい日とされました。この日、邪気を払い長寿を願って菊酒を飲んだり、菊を愛でたりする風習が日本に伝わり、平安時代以降に定着しました。翌日の九月十日になると「十日の菊(時期遅れで役に立たないものの喩え)」となってしまうため、「今日(九日)」という一日だけの特別で輝かしい美しさと、そこはかとない命の儚さがこの言葉には込められています。

この季語で詠むコツ

「今日の菊」を詠む際は、「今日」という限られた時間の特別感を意識することがポイントです。ただの美しい菊ではなく、重陽の節句というハレの日であること、そして明日になればその価値が変わってしまうという「時の移ろい」や「一期一会」の感情を重ね合わせると、句に深い陰影が生まれます。また、長寿や健康を願うおめでたい気分と、背中合わせにある寂しさを対比させるのも効果的です。

相性のいい言葉・取り合わせ

  • 「酒」「盃(さかづき)」「酌む」(重陽の節句で飲まれる菊酒を連想させる言葉)
  • 「露」「一露」「命」(菊の露を飲むと長寿になるという伝説に基づく言葉)
  • 「明日(あす)」「昨日(きのう)」(時間的な対比を強調する言葉)

今日の菊」の俳句例 (3件)

今日の菊明日はちりぢりちりぢりに
与謝蕪村【現代語訳】今日(重陽の節句)こそ美しく飾られているこの菊も、明日になれば用済みとなって、あちこちへ散り散りになって片付けられてしまうのだろう。 【鑑賞】ハレの日の主役である「今日の菊」が、翌日の「十日の菊」となって急速にその輝きを失っていく運命を、リズミカルな「ちりぢり」の繰り返しで詠んでいます。華やかさの絶頂にある瞬間の、裏側にある儚さを美しく描き出した名句です。
今日ばかり人も年寄れ今日の菊
松尾芭蕉【現代語訳】今日(重陽の節句)ばかりは、若い人たちも皆私のように歳をとって(長寿を願う心持ちになり)、この「今日の菊」を一緒に愛でようではないか。 【鑑賞】貞享元年(1684年)の作。「今日ばかりは誰もが老人になって、静かに人生や長寿を寿ぎながら菊を眺めよう」という、芭蕉らしいユーモアと隠者としての親しみが込められた一句です。「今日」の繰り返しが、その日だけの特別な祝祭感を際立たせています。
一露もこぼさぬ気也今日の菊
小林一茶【現代語訳】葉や花の上に宿った一滴の露さえも、決してこぼすまいと緊張しているような風情である、今日の特別な菊は。 【鑑賞】重陽の日に菊に宿る「菊の露」は、延命長寿をもたらす霊薬と信じられていました。一茶は、菊自身がその特別な価値を自覚し、一粒の露も無駄にしまいとぴんと身を強張らせているような健気な姿を、ユーモラスかつ繊細な観察眼で捉えています。

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