霧の谷
autumn 天文

霧の谷

きりのたに

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意味・由来\n「霧の谷(きりのたに)」は、秋の季語である「霧」の傍題(関連する言葉)の一つであり、特に山岳地帯や渓谷において、秋の冷気によって発生した霧が谷全体を覆い尽くす幻想的な光景を指します。秋の霧は、夜間の冷却によって空気中の水蒸気が凝結して発生しやすく、夜明けから朝方にかけて深く立ち込め、日が昇るにつれて徐々に消え去っていきます。谷底から湧き上がるように湧き立つ霧や、木々の間を静かに流れる霧の様子は、秋の深まりと自然の静寂、そしてどこか寂寥感を漂わせる日本の美しい景観の代表格です。\n\n### この季語で詠むコツ\n「霧の谷」を詠む際は、単に「霧が深い谷」という情景を描写するだけでなく、霧によって「何が見え、何が見えなくなっているか」というコントラストや変化を意識することが大切です。また、霧の動き(湧き上がる、流れる、消えるなど)や、霧の中に潜むかすかな光、音(鳥の声や水の音)に焦点を当てることで、静寂の中に動的な美しさを生み出すことができます。視覚だけでなく、ひんやりとした冷気などの触覚を意識するのも効果的です。\n\n### 相性のいい言葉・取り合わせ\n・光や色を表す言葉:紅葉、夕日、朝光、仄か(ほのか)、白し\n・音や静寂を表す言葉:一鳥(いっちょう)、水音、声、静けさ、消えゆく\n・山の情景を表す言葉:尾根、底、木々、岩、風、冷気

霧の谷」の俳句例 (3件)

霧の谷底に見え行く紅葉かな
向井去来【現代語訳】霧が深く立ち込めていた谷の底に、霧が晴れるにつれて、鮮やかな紅葉がだんだんと姿を現していくことだ。【鑑賞】去来が描くこの句は、秋の白い霧と、その奥から浮かび上がる真っ赤な紅葉との色彩の対比が非常に鮮やかです。視界が徐々に開けていく時間の経過と自然の美しさを捉えた名作です。
霧の谷わたる一鳥声もなし
飯田蛇笏【現代語訳】霧が深く立ち込める谷を、一羽の鳥が鳴き声も立てずに静かに渡っていく。【鑑賞】静寂に包まれた秋の谷を背景に、ただ一羽の鳥が音もなく霧の彼方へ消えていく様子を描いています。「声もなし」という表現が、霧の持つ深い静けさと、張り詰めた山の空気感を際立たせています。
霧の谷を落つる日重き光かな
芝不器男【現代語訳】霧の立ち込める谷へと沈んでいく夕日は、その霧に遮られて、どこか重々しい光を放っていることだ。【鑑賞】不器男ならではの繊細な色彩感覚と物質感が光る一句です。霧という湿り気を帯びた媒体を通すことで、本来は実体のない夕日の光が、まるで質量を持った「重き光」として谷に降り注ぐ様子を見事に表現しています。

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