菊の著綿
autumn 植物

菊の著綿

きくのきせわた

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意味・由来\n「菊の著綿(きくのきせわた)」は、重陽の節句(旧暦九月九日)の前夜に、菊の花に真綿(絹のわた)を覆い被せておき、翌朝、菊の露や香りをたっぷり吸い込んだその綿で肌を拭うことで、無病息災や不老長寿、若返りを願った平安時代からの宮廷の風習です。白菊には黄色い綿、黄菊には赤い綿、赤菊には白い綿を載せるなど、色彩の対比も美しく楽しまれました。\n\n### この季語で詠むコツ\n王朝雅を現代に伝える、非常に優美で知的な季語です。実際にこの行事を行う機会は少ないため、古典的な美意識を現代の感覚に引き寄せるか、あるいはその格式高い美しさをそのまま情景として描写するのがコツです。綿の質感、菊の露の湿り気、色の対比などを五感を使って捉えると、一句に立体感が生まれます。\n\n### 相性のいい言葉・取り合わせ\n色彩を表す言葉(「白」「黄」「紅」「朱」など、綿と菊の対比)や、質感や状態を表す言葉(「真綿」「露」「湿り」「香り」など)、さらに時間や光を表す言葉(「朝明」「夜半」「日の光」など)と非常に相性が良いです。

菊の著綿」の俳句例 (3件)

着せわたのぬれてこぼるる菊の露
加賀千代女【現代語訳】菊の花に被せた真綿がたっぷりと夜露を吸い、その重みで、今にも菊の露がぽたぽたとこぼれ落ちそうであることよ。【鑑賞】露を含んだ真綿の「濡れてこぼるる」という瑞々しい描写が秀逸です。視覚だけでなく触覚や重さまでも感じさせ、秋の生命力に満ちた美を表現しています。
白菊にしばしうつろふ綿かな
向井去来【現代語訳】真っ白な菊の花の上に、しばらくの間そっと載せられている綿の風情よ。【鑑賞】白菊と綿という、同色の「白」の重なりに宿る微細な美しさに焦点を当てています。「しばしうつろふ」という表現に、朝の限られた時間だけの儚い風情が繊細に漂う名句です。
きせ綿や紅をうつせる菊の露
与謝蕪村【現代語訳】菊に被せた真綿に、紅菊の鮮やかな色が、滴る菊の露とともに移り香のように染まっていることよ。【鑑賞】蕪村ならではの色彩感覚が光る名句です。白い真綿にじわりとにじみ出る赤い露の美しさを捉え、王朝の雅びな雰囲気を一枚の絵画のように鮮やかに描き出しています。

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