菊襲の衣
autumn 生活

菊襲の衣

きくがさねのころも

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意味・由来

「菊襲(きくがさね)」とは、日本の伝統的な衣服の配色法である「襲の色目(かさねのいろめ)」の一つです。秋の代表格である「菊」を模したもので、表が白、裏が紫(または移菊を表現したグラデーションなど)という、高貴で艶やかな色合わせが特徴です。この配色を施した装束や衣服のことを「菊襲の衣」と呼び、平安時代より公家や貴族の間で愛されてきました。単に衣服の美しさを指すだけでなく、秋が深まる中で菊の花が色を変化させていく自然の営みへの敬意が込められた、非常に風雅な季語です。

この季語で詠むコツ

「菊襲の衣」は、言葉自体に強い雅やかさと色彩(白、紫など)のイメージ、そして平安朝の古典的な気品が備わっています。そのため、現代の日常的な風景にそのまま合わせると、季語だけが浮いてしまうことがあります。詠む際には、着物そのものの美しさに焦点を当てるか、あるいは静けさ、水、光、残り香といった「目に見えない気配」や「繊細な感覚」を周囲に配することで、季語が持つ上品な情緒を引き立てるのがコツです。

相性のいい言葉・取り合わせ

  • 嗅覚・感覚を表す言葉:匂ひ(におい)、残り香、風、衣擦れ(きぬずれ)
  • 清澄な背景:水辺、月光、御簾(みす)、影、庭
  • 動作や状態:脱ぎ置く、歩む、重ねる、たためば

菊襲の衣」の俳句例 (3件)

菊襲脱ぎて置きたる匂ひかな
服部嵐雪【現代語訳】菊襲の美しい衣服を脱いでおいてある。そこから、まるで菊の香りがほのかに立ち上っているかのような、えも言われぬ上品な香りが漂ってくることよ。【鑑賞】脱ぎ置かれた衣服に残る残り香(香の薫物や、その人自身の気品)を、菊襲の衣の配色と重ね合わせて情緒豊かに捉えた一句。視覚的な美しさと嗅覚的な美が融合しています。
菊がさね着ぬに惜しまぬ匂ひかな
加賀千代女【現代語訳】菊襲の衣を実際に身にまとっているわけではないけれど、ただその美しい着物を見ているだけでも、菊の芳しい香りが惜しみなく漂ってくるように感じられることよ。【鑑賞】「着ぬに惜しまぬ」という表現に、衣服そのものの美しさと、そこから想起される秋の豊かな香りが表現されています。女性らしい繊細な視線で菊襲の雅さを讃えています。
菊襲女の歩む水のへに
日野草城【現代語訳】菊襲の美しい着物をまとった女性が、水辺を静かに歩んでいく。【鑑賞】水辺の澄んだ空気感と、菊襲の衣を着た女性の艶やかで上品な姿が、一枚の絵画のように美しく対比されています。古典的な美意識を現代の写生の中に落とし込んだ、叙情的な名作です。

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