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「蚊遣火(かやりび)」とは、蚊を追い払うために草木や藁、あるいは蚊取り線香をくすぶらせて煙を立てる火のことです。「蚊遣り」や「蚊取線香」も同じ仲間の季語となります。古くは平安時代の王朝文学にも登場し、ヨモギや杉の青葉などを燃やしてその煙で虫を退散させていました。現代では渦巻き型の蚊取り線香がおなじみですが、立ち上る細い青い煙と特有のほろ苦い香りは、今も昔も日本の夏の宵を象徴する情緒豊かな風物詩です。
蚊遣火は、視覚(ゆるやかに揺れる煙やかすかな赤い火)、嗅覚(どこか懐かしい煙の匂い)、そして時間の移ろい(夕暮れから静まり返る深夜まで)といった、五感に訴えかける要素を多く持っています。ただ「煙が出ている」と描写するだけでなく、縁側で涼む家族の姿、一人で過ごす静かな読書の時間、あるいは懐かしい故郷の情景など、身の回りの暮らしや心情と結びつけると深みが出ます。生活の静けさや安らぎ、あるいは一抹の寂しさを表現するのにも適しています。
・縁側、土間、軒先、畳(昔ながらの暮らしの空間) ・青煙、残り香、かすか、細し(煙や匂いを捉える言葉) ・宵、夜半、団扇(夏の宵の風情を醸し出す言葉) ・素焼、陶器(蚊遣り豚などの道具を思わせる言葉)