鹿妻草
autumn 植物

鹿妻草

かのつまぐさ・しかつまぐさ

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意味・由来

「鹿妻草(かのつまぐさ・しかつまぐさ)」とは、秋の野に美しく咲きこぼれる「萩(はぎ)」の非常に風流な別名(雅名)です。 古来、日本では秋に鳴く「鹿」と、その妻に見立てられた「萩の花」は、万葉集の時代から一対の恋人同士のように深く結びつけて詠み継がれてきました。鹿が恋焦がれて鳴くとき、その傍らにはいつも優しく揺れる萩の花があるというロマンチックな見立てから、萩を「鹿の妻なる草」=「鹿妻草」と呼ぶようになりました。日本の伝統的な美意識が凝縮された、極めて文学的な季語です。

この季語で詠むコツ

単に「萩」と詠むよりも、古典的な情緒や優雅な物語性を引き出したい時に用いるのが効果的です。言葉自体が持つ雅やかで繊細な響きを活かすため、現代の即物的な風景よりも、静寂、月光、夜風、露といったしっとりとした自然の情景と組み合わせるのがコツです。鹿妻草という名に込められた「恋心」や「はかなさ」を背景に滲ませることで、句に深い奥行きが生まれます。

相性のいい言葉・取り合わせ

  • 自然の情景:「露(つゆ)」「月光」「秋風」「夕闇」「雨」
  • 聴覚的な要素:「鹿の声」「虫の音」「風の音」「静けさ」
  • 状態や動作:「そよぐ」「こぼるる」「乱るる」「濡るる」

鹿妻草」の俳句例 (3件)

鹿妻草こぼるる露にふかれけり
立花北枝【現代語訳】萩(鹿妻草)の花や葉からこぼれ落ちる露が、吹き抜ける秋風に心地よく揺さぶられていることよ。【鑑賞】江戸中期の俳人、立花北枝による軽妙で美しい一句。風が吹くたびに、萩の細い枝からきらきらと露がこぼれ落ちる一瞬の美しさを捉えています。露が風に吹かれているという主客の描き方が絶妙で、露そのものが風と戯れているかのような、瑞々しくもはかない一瞬を切り取っています。
鹿妻草そよぐや露の身の置所
加賀千代女【現代語訳】萩(鹿妻草)が秋風にそよそよと揺れている。その細い葉に宿る露は、風に吹かれていつこぼれ落ちるか分からず、まるで自分の身の置き所に困っているかのようだ。【鑑賞】千代女ならではの繊細な観察眼が光る名句です。風に揺れる鹿妻草の露を、どこか頼りなく、しかし健気な存在として擬人化して描いています。はかない露の姿に、自らの人生や揺れ動く心を重ね合わせているような、深い情趣が感じられます。
鹿妻草咲きそめしより雨がちなる
吉屋信子【現代語訳】萩の花(鹿妻草)が咲き始めてからというもの、どういうわけか雨の降る日が多くなったことだ。【鑑賞】小説家としても高名な吉屋信子の作。秋の訪れを静かに告げる鹿妻草がひっそりと開花した頃、しとしとと降り続く秋雨の風情をありのままに詠んでいます。晴れやかな秋晴れではなく、物憂げでしっとりとした秋の寂寥感が、雨というモチーフを通して見事に表現されています。

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