隠君子

隠君子

いんくんし

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意味・由来

「隠君子(いんくんし)」とは、秋を代表する花である「菊」の雅名(異称)です。中国・北宋の儒学者である周敦頤(しゅうとんい)の文章『愛蓮説』にある「菊、花之隠逸者也(菊は花の隠者なり)」という一節に由来します。世俗の富貴や名利に惑わされず、人里離れた地で静かに節操を守って生きる高潔な人物(隠者・君子)に菊の佇まいを重ね合わせた言葉です。漢詩の深い教養と文人好みの風雅な精神が宿る、格調高い三秋の季語です。

この季語で詠むコツ

単に「菊」と言うよりも、孤高、静寂、文人趣味、隠棲といった精神的な奥行きを漂わせることができます。植物としての菊そのものの姿を描くのはもちろん、隠者が住むような静かな庵や山里の情景、書物やお茶といった静謐な暮らしの場面と取り合わせると効果的です。漢語特有の硬さや重みがある言葉ですので、他の部分を柔らかい和語で整えると、品格と風情が調和した一句に仕上がります。

相性のいい言葉・取り合わせ

  • 場所・空間:庵(いおり)、門、書斎、山里、柴の戸、古庭
  • 情景・時間:夕雨、夕日、薄霜、静寂、暮色、秋風
  • 動作・心情:訪ふ(とふ)、逢はず、孤高、清貧、友

隠君子」の俳句例 (3件)

隠君子にあはずも雨の夕哉
与謝蕪村【現代語訳】隠棲する友(あるいは菊の花)を訪ねたが、会うことは叶わなかった。しかし、しとしとと降る秋の夕雨の中に佇む風情もまた味わい深いものだ。【鑑賞】「隠君子」に隠者と菊の二重の意味を重ねています。友に会えなかった寂しさと、雨に濡れる菊の風情が一体となり、蕪村らしい文人趣味の漂う静けさに満ちた名句です。
隠君子の門や十里の稲筵
黒柳召波【現代語訳】隠者の暮らす門前には菊が咲き、その向こうには見渡す限り一面の稲むしろが干し広げられている。【鑑賞】門辺に咲く高潔な菊(隠君子)の静けさと、見渡す限りの広大で豊かな秋の田園風景(稲筵)との対比が鮮やかです。蕪村の高弟である召波の、絵画的でスケールの大きな構成が光る句です。
隠君子を訪へば門辺に菊の花
正岡子規【現代語訳】世を避けて静かに暮らす隠者を訪ねて行くと、その質素な門のあたりに見事な菊の花が咲いていた。【鑑賞】隠君子(隠者)を訪ねたら、まさにその象徴である本物の「菊の花(隠君子)」が咲いていたという、言葉の連想を素直に写生へ落とし込んだ一句です。気取りすぎず、落ち着いた秋の訪問の風情が伝わります。

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