稲干す

稲干す

いねほす

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意味・由来

「稲干す(いねほす)」は、刈り取ったばかりの稲を田んぼや畦道などに組み上げた「稲木(いなぎ)」や「稲架(はさ)」に掛け、天日に当てて乾燥させる作業を表す晩秋の季語です。機械化が進む前は農村のいたるところで見られた秋の代表的な風物詩であり、収穫の喜びや農作業の活気、秋晴れの穏やかな陽射しを感じさせます。乾燥が進むにつれて立ち込める、干し稲特有の甘く香ばしい匂いもこの季語の魅力です。

この季語で詠むコツ

「稲を干す作業そのもの」に焦点を当てるだけでなく、干されている稲のある「風景の広がり」や「光・匂い・影」などの五感情報を捉えると効果的です。また、刈り入れが終わった後の安堵感や、どこか物悲しい晩秋の夕暮れ時の空気感など、時間の経過や農家の生活感を取り合わせると、情緒豊かで奥行きのある一句になります。

相性のいい言葉・取り合わせ

  • 光・気象: 秋晴、日ざし、夕日、秋風、茜空
  • 農村・風景: 稲架(はさ)、畦道、祠(ほこら)、山裾、藁(わら)
  • 五感・生活: 日の匂ひ、ぬくもり、結ぶ、掛ける、夕餉(ゆうげ)

稲干す」の俳句例 (3件)

稲干すや大和の国の日のひかり
正岡子規【現代語訳】刈り取った稲を干している。大和の国(奈良)の穏やかで豊かな秋の日の光が、一面に降り注いでいることよ。 【鑑賞】古都・大和路の広々とした田園に稲が干され、そこに満ち足りた秋の日差しが燦々と注ぐ情景を、大らかかつ堂々と詠んだ名句です。「日のひかり」という素直な言葉が、収穫の恵みと土地の歴史的な豊かさを引き立てています。
稲干すや門の小松の肩身狭
小林一茶【現代語訳】門口いっぱいに稲を干しているので、門の脇に植えられた小さな松が窮屈そうに肩身を狭くしているよ。 【鑑賞】家の敷地や門の周りにまで所狭しと稲架が組まれ、刈り取った稲がぎっしりと干されている様子を描いています。主役である稲の圧倒的な量に対して、端に追いやられた小松に同情するような一茶らしいユーモアと親しみが光る一句です。
稲干すや小さき祠のうしろまで
中村汀女【現代語訳】刈り取った稲が干されている。田の片隅にある小さな祠のすぐ後ろまで、びっしりと稲が掛けられていることだ。 【鑑賞】農村の畦や隅にある小さな神様の祠(ほこら)の背後にまで稲架が立ち並ぶ風景を、女性らしい繊細な視線で切り取っています。土地を余すところなく使い切る農作業の活気とともに、土地の神様への感謝や親しみも自然と感じられる温かな作品です。

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