稲葉の露

稲葉の露

いなばのつゆ

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意味・由来

「稲葉の露(いなばのつゆ)」とは、秋の水田に茂る稲の細長い葉に宿る朝露や夕露のことです。秋の澄んだ大気と朝晩の急激な冷え込みによって、青々とした、あるいは黄金色に色づき始めた稲葉の先に無数の水滴が美しく結ばれます。古くから露は儚さの象徴として和歌にも詠まれてきましたが、稲葉の露は秋の豊かな実りへの予感や、農村の清々しく瑞々しい朝の情景を強く感じさせる季語です。

この季語で詠むコツ

稲葉の露を詠む際は、光や風、生き物との相互作用に注目するのが効果的です。朝日を受けてきらめく「光の粒」としての美しさ、稲穂が風に揺れて露がハラハラと零れ落ちる「動き」、あるいは雀や虫が触れて滴る「生命の気配」などを捉えると、情景が鮮やかに立ち上がります。単に「露が綺麗だ」と説明するのではなく、露の重みでしなる葉の角度や、濡れる土の匂いなど五感を使った描写を心がけましょう。

相性のいい言葉・取り合わせ

  • 時間・光の言葉: 「朝日子(あさひこ)」「薄明」「朝ぼらけ」「きらら」「夕茜」など、光の反射を描く言葉。
  • 動き・状態を表す言葉: 「こぼるる」「重たげに」「すべる」「しなふ」「払ふ」など、滴の重みや揺れを表す動詞。
  • 自然・生き物: 「雀」「秋風」「野分」「畔道(あぜみち)」「青田」「穂波」など、田園風景を想起させる語。

稲葉の露」の俳句例 (3件)

稲の葉の露こぼれあふ野分かな
加賀千代女【現代語訳】吹き荒れる野分(台風の強い風)に煽られて、稲の葉に宿る露が互いにこぼれ合っていることよ。 【鑑賞】秋の激しい嵐「野分」が吹き抜ける田んぼの情景です。強風に激しく揺れる稲葉から、無数の露の玉が弾け飛ぶように零れ落ちる瞬間を捉えており、動的な自然の激しさと露の繊細な美しさが鮮やかに対比されています。
稲の葉の露をこぼして雀立つ
正岡子規【現代語訳】稲の葉に宿っていた朝露をサラサラとこぼしながら、雀が勢いよく飛び立っていった。 【鑑賞】朝の田んぼで餌をついばんでいた雀が、人の気配などに驚いて飛び立つ瞬間を写生した一句です。雀が飛び立つ反動で稲葉が揺れ、光る露が零れ落ちる様子が目に浮かび、爽やかな朝の空気感と生き物の躍動感が見事に表現されています。
稲の葉の露にころがる蛍かな
小林一茶【現代語訳】稲の葉に置いた露の玉の上で、蛍がつるりと足を滑らせて転がっていることよ。 【鑑賞】秋口に残る蛍(秋蛍)が、夜露に濡れた稲葉にとまろうとして足をとられているユーモラスな情景です。小さな虫の愛らしい仕草と、瑞々しい露の大きさを対比させ、一茶らしい温かな視線で自然の小さなドラマを描き出しています。

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