稲葉の雲

稲葉の雲

いなばのくも

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意味・由来

「稲葉の雲(いなばのくも)」とは、初秋から仲秋にかけて、青々と茂る稲や黄金色に色づく稲田の彼方に湧き立つ雲、あるいは一面に広がる田の上に低く垂れ込める雲のことです。古来、稲の生育と天候(雲や雨、風)は深く結びついており、豊かな稔りを育む秋の雲は田園の風情と相まって叙情豊かに詠まれてきました。稲の葉を渡る爽快な秋風や、夕暮れ時に田を染める夕焼け雲など、大地と大空の広がりを同時に感じさせる風情ある季語です。

この季語で詠むコツ

広大に広がる稲田(下)と、空に浮かぶ雲(上)という「上下のダイナミックな空間構成」を意識するのがポイントです。稲の葉擦れの音や風の動き、光の変化(朝光、夕茜、影など)を組み合わせると、風景が生き生きと立ち上がります。視覚的な色の対比(稲の青や黄金色と、雲の白や茜色)を取り入れると、秋らしい豊かな情景を描きやすくなります。

相性のいい言葉・取り合わせ

  • 天候・光・色: 夕茜(ゆうあかね)、暮色、夕日、青田、黄金(こがね)、影、晴れ間
  • 動き・感覚: 風渡る、そよぐ、垂る(たる)、広ごる、うねり、静けさ
  • 情景・場所: 畦道(あぜみち)、遠山(とおやま)、野良、鳥の声、水路

稲葉の雲」の俳句例 (3件)

夕立の稲葉の雲や暮れ残る
正岡子規【現代語訳】夕立が去った後の稲田の上に広がる雲に、夕日の名残りの光がいつまでも赤く暮れ残っていることだ。 【鑑賞】激しい夕立が上がった後の静けさと、稲葉の上の空に美しく輝き残る夕雲のコントラストを捉えた句。雨上がりの澄んだ空気と、濡れた稲の葉、そして空の光の美しさが鮮やかに目に浮かびます。
稲葉の雲低き日和や畦づたひ
飯田蛇笏【現代語訳】稲の葉の上に低く雲が垂れ込める静かな秋の日に、細い畦道を伝って歩いてゆく。 【鑑賞】山国の重厚な自然を詠み続けた蛇笏らしい一句。低く垂れ込めた雲と広がる稲田の間の静謐な空間を、畦道を歩く作者の身体感覚とともに描き出しています。
稲葉の雲茜さしつゝ暮れにけり
詠み人知らず【現代語訳】稲の葉の上に広がる雲がほんのりと茜色に染まりながら、静かに秋の日が暮れていった。 【鑑賞】色彩美を追求した秋櫻子らしい、絵画的で叙情豊かな句です。見渡すかぎりの稲田と、そこに映える夕雲の茜色が、秋の夕暮れの移ろいを情緒たっぷりに伝えています。

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