稲田
autumn 地理

稲田

いなだ

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意味・由来

「稲田(いなだ)」は、秋になって豊かに実り、黄金色の稲穂が一面に広がる田んぼを指す季語です。日本では古くから稲作が生活の基盤であり、秋の稲田は単なる風景にとどまらず、人々の労働の結晶であり、神への感謝を捧げる信仰の対象でもありました。青々と茂る夏の「青田」から一転して、山吹色や黄金色に輝く稲田は、実りの秋の豊かさと平穏を象徴する、最も日本らしい情景の一つです。

この季語で詠むコツ

稲田を詠む際には、その圧倒的な「広がり」や「色彩」をどう表現するかがポイントです。単に「黄色い」と描写するだけでなく、風に揺れる「音」や「波のような動き」、あるいは刈り入れを控えた時期の独特な「甘い藁の匂い」など、五感を意識して詠むと立体感が出ます。また、どこまでも広がる田んぼと、それを取り巻く空の青さや雲の影、近くを通る汽車や道行く人々などを対比させることで、広大なスケール感を表現できます。

相性のいい言葉・取り合わせ

  • 光・色:黄金、山吹色、日の光、夕日、影、波、風
  • 音・動き:そよぐ、渡る、一陣、波打つ、静もり
  • 風物:案山子(かかし)、雀、畦道(あぜみち)、農夫、汽車、どこまでも

稲田」の俳句例 (3件)

一本の松のほかには稲田かな
高浜虚子【現代語訳】ぽつんと立つ一本の松の木のほかには、見渡す限り黄金色の稲田が広がっていることよ。【鑑賞】ただ一本の松と、広大な稲田という極めてシンプルな構図の中に、秋の豊かな大自然の広がりが鮮やかに描き出されています。引き算の美学が光る、絵画的な一句です。
稲田行く雲の影あり秋の風
正岡子規【現代語訳】黄金色に実った稲田の上を、流れる雲の影が通り過ぎていく。そこに爽やかな秋の風が吹き抜けていくことだ。【鑑賞】雲の動きが稲田に影を落とし、それが風とともに移動していく様子をダイナミックに捉えています。視覚的な光と影のコントラストに秋風の体感が加わった、写生を重んじる子規らしい名句です。
汽車すぐに暮れてしまへる稲田かな
久保田万太郎【現代語訳】汽車が走り去ると、たちまちのうちに夕闇に包まれてしまう、広大な稲田であることよ。【鑑賞】旅愁を誘う汽車の響きと、日が落ちて急速に暗闇に溶けていく秋の稲田の静寂が対比されています。あっという間に暮れていく秋の日の短さと、どこか寂しげで叙情的な夕景が心に残ります。

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