引板

引板

ひきいた・ひた

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意味・由来

「引板(ひた/ひきいた)」とは、秋に実った稲や畑の作物を雀などの鳥や猪・鹿などの害獣から守るために用いられた伝統的な威嚇具です。田畑の端々に吊るした複数の木板や竹筒に長い縄を結びつけ、見張り小屋(庵)や母屋からその縄を強く引くことで、板同士が激しくぶつかり合って乾いた鋭い音を響かせ、鳥獣を追い払いました。古くは古代から使われており、秋の農村の過酷ながらも風情ある暮らしを象徴する生活・農事の季語です。

この季語で詠むコツ

引板を詠む際は、「音」と「その前後の静けさ」の対比を描くのが効果的です。秋晴れの空の下や夜露の降りる静寂の中に、突如として響き渡る板の乾いた音、そして逃げ去る雀の羽音や、音が止んだ後に戻る深閑とした空気を意識してみましょう。また、音そのものだけでなく、縄をぐっと引く手の力感、見張り小屋で過ごす農夫の孤独や夜通しの番の情景など、人の営みと絡めることで味わい深い句になります。

相性のいい言葉・取り合わせ

  • 聴覚・動態を表す言葉:「からんと鳴る」「響く」「縄引く」「たゆむ」「群れ飛ぶ」
  • 自然・風景を表す言葉:「門田(かどた)」「稲穂」「雀」「朝露」「夕日」「山風」
  • 状況・情景を表す言葉:「番小屋」「庵(いお)」「夜半」「静けさ」「遠山」

引板」の俳句例 (3件)

稲妻や顔を見合す引板の守
松尾芭蕉【現代語訳】夜の田で激しい稲妻がぴかりと光り、鳥獣を威嚇する引板を引いて番をしていた二人が、その閃光のなか思わず互いの顔を見合わせていることだ。 【鑑賞】闇夜に突然走った稲光の鋭さと、鳥獣を警戒して張り詰めていた番人の驚きや安堵の表情が、一瞬の光景の中に見事に凝縮されています。
引板鳴てしばらく遠き雀かな
与謝蕪村【現代語訳】引板がカランと音を立てて鳴り響き、驚いた雀たちが飛び去って、しばらくの間は遠くの空や木立ちを漂っていることよ。 【鑑賞】板の甲高い音と、散っていく雀の動きを写生した句です。引板の余韻と田園の澄んだ秋の静けさが「しばらく遠き」という時間の経過に見事に漂っています。
引板引や門田の露のこぼるる程
野沢凡兆【現代語訳】家の前の田に張られた引板の縄を力強く引くと、その激しい揺れで稲穂に宿った秋の朝露がこぼれ落ちるほどである。 【鑑賞】『猿蓑』所収。縄をぐっと引く手の力強さと、波打つ稲穂からこぼれる露の瑞々しさが鮮やかに描かれており、秋の朝の澄んだ空気感が伝わります。

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