御難の餅
autumn 生活

御難の餅

ごなんのもち

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意味・由来\n「御難の餅(ごなんのもち)」は、秋(陰暦九月十二日、現在は新暦九月十二日頃)に行われる日蓮宗の龍口法難会(たつのくちほうなんえ)にちなむ季語です。文永八年(一二七一年)九月十二日夜、日蓮が龍口の刑場(神奈川県藤沢市江の島近く)へ引かれていく際、通りかかった老婆(桟敷の尼)が鍋の蓋に胡麻入りのぼた餅をのせて捧げたという故事に由来します。その後奇跡的に処刑を免れたことから、龍口寺をはじめ日蓮宗の各寺院で法難会に餅が供えられ、参詣者に撒かれたり配られたりします。厄除け・災難除けの御利益があるとされ、秋の夜の寺の賑わいと信仰の熱気を表す季語です。\n\n### この季語で詠むコツ\n境内に群がる人々が空中を舞う餅を一心に受け止めようとする熱気や、幸運にも手に入れた餅の温もり・感触に焦点を当てると臨場感が生まれます。また、法難の故事が持つ厳粛でドラマチックな歴史的背景と、餅を拾って喜ぶ庶民的な日常感の対比を意識して描くのも効果的です。秋の夜風やすすき、寺の堂宇の陰影などを添えると、秋ならではの季節感が引き立ちます。\n\n### 相性のいい言葉・取り合わせ\n・境内の情景:夜宮、堂、群集、手から手へ、灯影、闇\n・餅の描写:胡麻、温もり、袂(たもと)、掌、白布\n・秋の気配:秋風、夜寒、更くる夜、秋気、星月夜

御難の餅」の俳句例 (3件)

御難の餅拾ひて袂重からず
阿部みどり女【現代語訳】まかれた御難の餅を拾って着物の袂に入れたが、少しも重く感じられないことだ。\n【鑑賞】災難除けのありがたいお餅を無事に拾い得た喜びと軽やかな足取りが、「袂重からず」という表現によく表れています。持ち帰る餅の重みさえ心地よく、信仰の安らぎと秋夜のすがすがしさが素直に詠み込まれた佳句です。
御難の餅拾ひたる手を持て余す
能村登四郎【現代語訳】人々にもみくちゃにされながら御難の餅を拾ったものの、その餅を握った手をどう扱ってよいか持て余している。\n【鑑賞】激しい餅撒きの争奪戦の中で偶然手に入れたありがたい餅。押し合いへし合いの興奮が冷めた直後、握りしめた餅の感触とともに、ふと我に返った瞬間の微妙な心理を捉えています。人間のふとした所作や心の揺らぎを巧みに描き出した一句です。
御難の餅拾ふや堂の闇深き
清崎敏郎【現代語訳】御難の餅を拾っていると、本堂の奥の闇が一層深く神秘的に感じられる。\n【鑑賞】法難会の餅撒きで沸き立つ人々の動きと、その背景にある本堂の静かで深い闇とのコントラストが鮮やかです。法難の歴史が宿る寺の厳かな空気と、秋の夜の深まりが同時に感じられる重厚な作品です。

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