富士牛蒡

富士牛蒡

ふじごぼう

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意味・由来

「富士牛蒡(ふじごぼう)」は、キク科の多年草「フジアザミ」の根、またはそれを漬物や煮物などの食用に加工したものを指す秋の季語です。フジアザミは富士山麓やその周辺の火山砂礫地に多く自生し、日本産のアザミの中で最も大きな紅紫色の花をややうつむき加減に咲かせます。その地下にある根が牛蒡のように太く育ち、繊維質で特有の野趣と豊かな風味を持つことから「富士牛蒡」と呼ばれ、富士山周辺の郷土の味覚・名物として古くから親しまれてきました。

この季語で詠むコツ

富士牛蒡を詠む際は、霊峰・富士の荒々しくも雄大な大自然の気配と、大地の恵みとしての素朴な力強さを意識することがポイントです。砂礫地で深く根を張る植物であるため、掘り出す際の富士特有の火山灰・スコリアの砂煙や手触り、あるいは茶店や土産物屋で漬物として売られている情景、歯ごたえや風味といった味覚・嗅覚に焦点を当てると、五感に訴える生き生きとした句になります。

相性のいい言葉・取り合わせ

・風土・自然を捉える言葉:砂礫(されき)、火山灰、スコリア、山颪(やまおろし)、青嶺、雲海 ・動作や手触りを表す言葉:掘る、噛む、削ぐ、砂こぼる、土の香 ・旅や生活の言葉:茶店、味噌漬、土間、野趣、夕餉

富士牛蒡」の俳句例 (3件)

富士牛蒡噛めば富士の根ひゞくらむ
富安風生【現代語訳】富士牛蒡をぽりぽりと噛み締めると、その力強い歯ごたえが大地の奥深くにまで伝わり、富士山の根元までもが響き渡るかのようだ。 【鑑賞】富士牛蒡特有の歯ごたえと野趣あふれる風味を、雄大な富士山そのもののスケール感と見事に結びつけた名句です。「噛めば富士の根ひびくらむ」という大胆でユーモラスな誇張表現が、山の滋養を体内に取り込むような爽快感と大地の生命力を生き生きと伝えています。
富士牛蒡掘りたるあとの砂崩れ
柴田白葉女【現代語訳】富士牛蒡を深く掘り起こしたあとから、さらさらと火山灰の砂が音を立てて崩れていく。 【鑑賞】フジアザミが自生する富士山麓の火山灰地(砂礫地)の情景を鮮やかに切り取っています。太く深い根を苦労して引き抜いた瞬間の達成感と、乾いた砂がさらさらと崩れて埋まっていく無常感や寂寥感が、無駄のない写生によって鮮明に立ち上がっています。
富士牛蒡掘りし砂坂崩れやすし
及川貞【現代語訳】富士牛蒡を掘り出した砂の傾斜面は、足を踏み入れるだけで崩れやすく不安定である。 【鑑賞】富士山特有の滑りやすい砂礫の斜面で、足場に気を配りながら富士牛蒡を収穫する人々の身体感覚を描いています。「砂坂崩れやすし」という率直な把握が、富士山麓の厳しい自然環境と、そこに力強く息づく植物の生命力を際立たせています。

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