紅天狗茸

紅天狗茸

べにてんぐたけ

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意味・由来

「紅天狗茸(べにてんぐたけ)」は、秋の高原や針葉樹林・白樺林などの林床に発生する毒キノコの一種で、秋の季語(植物)です。 鮮やかな深紅の傘に散らばる白いイボが特徴で、童話や絵本に出てくるキノコの代表的なモデルとして知られています。その愛らしく美しい外見とは裏腹に、幻覚作用や中毒症状を引き起こす強い毒(イボテン酸やムシモールなど)を含んでいます。名前に「天狗」と付くのは、天狗が住むような深山に生えることや、食べると天狗のように飛び跳ねる幻覚を見ることに由来するとも言われます。美しさと危険という二面性が際立つ季語です。

この季語で詠むコツ

絵本のような鮮烈な美しさと、背後に潜む「毒」や「死」という影の対比を意識することが最大のポイントです。単に「可愛い」「赤い」と詠むだけでは通俗的になりやすいため、湿り気を帯びた秋の森の静けさ、苔や落ち葉の暗さとの色彩対比、あるいは魔性や妖気といった心理的陰影を重ねると深みが生まれます。「べにてんぐたけ(7音)」と音数が多いため、上五に字余りで置くか、中七に据えてリズムを整える工夫も効果的です。

相性のいい言葉・取り合わせ

・色彩・光:白樺、落葉松(からまつ)、青苔、木漏れ日、濃紫、薄暮 ・質感・気配:滴(しずく)、湿り、妖気、毒、微熱、幻、ひそやか ・童話的・幻想的語彙:魔女、小人、深い森、森番、神隠し

紅天狗茸」の俳句例 (3件)

紅天狗茸小さき死を孕みけり
有働亨【現代語訳】紅天狗茸が、その愛らしく小さな傘の中に確実な死を宿して生えていることだ。【鑑賞】手のひらに乗るほどの愛らしい姿の中に、人間の命を容易に奪う猛毒が宿っているという戦慄を、「小さき死を孕みけり」と研ぎ澄まされた言葉で捉えた名句です。美と毒、生と死が一本のキノコの中で交錯する緊迫感が漂います。
紅天狗茸雨の樹下に燦とあり
福田蓼汀【現代語訳】雨煙る森の樹の下で、紅天狗茸が鮮やかにまばゆく光を放つように立っている。【鑑賞】雨に濡れて薄暗い林床において、傘の紅色と白い斑点がひときわ鮮やかに浮かび上がる情景を「燦とあり」と描写しています。暗がりの中で妖しい生命の輝きを放つキノコの存在感が鮮烈に伝わります。
紅天狗茸山気濃き日の毒放つ
古賀まり子【現代語訳】山の冷気や霧が深く立ち込める日、紅天狗茸がその強い毒気を漂わせている。【鑑賞】しっとりと山の気が満ちる深山の神秘的な空気感と、キノコが発する魔力のような気配が見事に調和しています。視覚的な赤さだけでなく、森の湿度や匂い、肌で感じる冷気まで詠み込まれた一句です。

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