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福田蓼汀

ふくだりょうてい

作風・特徴

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代表句 (13件)

五十雀幹をめぐりて下りけり
季語: 五十雀 (autumn)
【現代語訳】五十雀が木の幹の周りをくるくると回りながら下りてきたことだよ。【鑑賞】樹木の周りを螺旋を描くように軽快に動き回る五十雀の姿を的確に描写しています。「幹をめぐりて」という動態表現によって、木の立体感と山林の静けさが引き立ち、小鳥の愛らしい活発さが伝わってきます。
銀山猿子ハイマツ深く隠ろへて
季語: 銀山猿子 (autumn)
【現代語訳】銀山猿子が、ハイマツの深い茂みの中へと姿を隠していった。 【鑑賞】山岳俳句の第一人者である作者が、高山帯の厳しい自然の中で出会った銀山猿子の姿を捉えた一句です。鮮やかな姿を見せたかと思うと、厳しい山風を避けるようにハイマツの奥深くへと潜んでいく鳥の警戒心と野性味が、簡潔かつ的確に描写されています。
苔桃の実のあざやかに霧走る
季語: 苔桃の実 (autumn)
【現代語訳】苔桃の赤い実が鮮やかに際立つなか、山の霧が風に乗って勢いよく流れてゆく。 【鑑賞】吹き抜ける白い濃霧と、その合間にくっきりと浮かび上がる苔桃の赤い実の対比が鮮烈な一句です。「走る」という動的な表現により、高山の変わりやすい気象の激しさと、その厳しさのなかで輝く生命の強さが描き出されています。
大葉酸の木実をつけて谷深し
季語: 大葉酸の木 (autumn)
【現代語訳】大葉酸の木が小さな実を結んでおり、その足元を見下ろせば谷は深く切れ込んでいる。 【鑑賞】山岳俳句を得意とした作者ならではの、深山の険しさと静けさを切り取った句です。険しい谷の深さと、可憐に実を結ぶ大葉酸の木という自然の対比が、秋の山の深遠さを際立たせています。
四十雀雁沼の夕日を背負ひけり
季語: 四十雀雁 (autumn)
【現代語訳】四十雀雁が、ねぐらとする沼に沈みゆく夕日を背中に背負うようにして飛んでいる。\n【鑑賞】広大な沼地に夕日が沈む雄大な秋の夕暮れと、そこに飛来した四十雀雁のシルエットが見事に重なっています。北国から渡ってきた鳥たちを迎える豊かな自然の温もりと、秋特有の静けさが胸に迫る秀句です。
ねぶた流す海を夜空となしにけり
季語: ねぶた流す (autumn)
【現代語訳】ねぶたを流す海は、その灯りを水面に映し出し、まるで星々が煌めく夜空のようになっている。 【鑑賞】暗黒の海へ放たれたねぶたの灯火が水面に照り返り、海と空の境界が溶け合って、まるで海全体がもう一つの夜空になったかのような幻想的な光景を捉えています。北国の初秋の夜の荘厳な美しさが広がります。
袖黒鶴一羽まじりて鶴の群
季語: 袖黒鶴 (autumn)
【現代語訳】無数に集まる鶴の大きな群れの中に、たった一羽だけ袖黒鶴が混ざっている。【鑑賞】大群の中にわずかに混じる珍しい袖黒鶴を見出した瞬間の喜びと驚きをストレートに写生した一句です。数千羽の鶴の中でひときわ目を引く気品と特別感がシンプルかつ鮮やかに伝わってきます。
中尺鴫一羽が立ちて皆立てる
季語: 中尺鴫 (autumn)
【現代語訳】中尺鴫の群れのうち、まず一羽が飛び立つと、それに続いて皆が一斉に立ち上がった。【鑑賞】群れで行動する中尺鴫の生態を、飾りのない写生によって見事に捉えています。干潟で静かに餌をついばんでいた群れが、リーダー格の一羽の動きに連鎖して一斉に飛び立つ緊張感と躍動感が、簡潔な言葉運びから鮮やかに伝わってきます。
萩ましこ風さわぐ嶺をわたりゆく
季語: 萩猿子 (autumn)
【現代語訳】萩猿子の群れが、冷たい風が吹き荒れる高嶺を越えて飛び去ってゆく。【鑑賞】福田蓼汀は山岳俳句の第一人者として知られます。寒風が吹き荒れる厳しい山の尾根を、萩の花のような紅色を帯びた小鳥たちが軽快に渡っていく情景です。厳しい自然環境と、その中をたくましく美しく生きる野鳥の生命力が見事に対比されています。
白山蓬雲這ひのぼる岩間かな
季語: 白山蓬 (autumn)
【現代語訳】白山蓬の咲く岩の間を、立ち込める雲がゆっくりと這い上がってくることだ。【鑑賞】山岳俳人として名高い作者が、険しい高山の岩肌に自生する白山蓬と、谷底から湧き上がる雲の動きを静かに捉えています。峻厳な自然と植物の調和が美しい作品です。
葡萄酒を製す夜寒の搾汁機
季語: 葡萄酒製す (autumn)
【現代語訳】夜の寒さが身にしみるころ、搾汁機を動かして葡萄酒を造っている。 【鑑賞】秋が深まり夜の冷え込みが増すなか、収穫された葡萄を搾る機械が稼働している情景です。「夜寒」という時候の季語を配合することで、冷え冷えとした薄暗い工場の中で、ひたむきに続く作業の緊張感と機械の金属的な響きが鮮明に伝わってきます。
葡萄酒を醸す樽並み星流る
季語: 葡萄酒作る (autumn)
【現代語訳】葡萄酒を仕込んで発酵させている樽が整然と並ぶその上空を、流れ星がすっと流れていく。\n【鑑賞】薄暗い醸造所の中にどっしりと並ぶ樽の重厚感と、澄み渡る秋の夜空を走る流れ星の儚い輝きが美しいコントラストを描いています。大地の酒造りと天体の運行が美しく交錯したスケールの大きい句です。
紅天狗茸雨の樹下に燦とあり
季語: 紅天狗茸 (autumn)
【現代語訳】雨煙る森の樹の下で、紅天狗茸が鮮やかにまばゆく光を放つように立っている。【鑑賞】雨に濡れて薄暗い林床において、傘の紅色と白い斑点がひときわ鮮やかに浮かび上がる情景を「燦とあり」と描写しています。暗がりの中で妖しい生命の輝きを放つキノコの存在感が鮮烈に伝わります。