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「別れ蚊(わかれか)」とは、秋が深まる頃、季節の終わりとともに姿を消していく蚊のことです。夏の間は刺されると痒く、羽音すら疎ましく思えた蚊ですが、秋風が吹く頃になると飛び方も弱々しくなり、人を刺す力も失われていきます。そんな最後の力を振り絞るように生きている姿に、かつての憎らしさは消え、命の儚さや去りゆく季節への哀愁を感じて「別れ」という詩情豊かな言葉が添えられました。晩秋の気配をしみじみと感じさせる季語です。
「別れ蚊」を詠む際は、夏の蚊のような煩わしさではなく、哀れさや慈しみの視点を持つことが大切です。叩こうとしても弱々しくて手を下せない心情や、障子や壁、机の端などにじっと止まったまま動かない無力な姿を描くと、秋の寂寥感が際立ちます。「叩く」「払う」といった日常の何気ない動作の中に宿る、ふとしたためらいや心の揺れを素直に五七五に落とし込んでみましょう。
・灯影(ほかげ)、薄暮(はくぼ)、白壁(しらかべ) ・障子(しょうじ)、畳(たたみ)、指先(ゆびさき) ・夜寒(よざむ)、秋風(あきかぜ)、寂けさ(しずけさ)