月の氷

月の氷

つきのこおり

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意味・由来

「月の氷(つきのこおり)」は、秋の夜空に冴えわたる月光の冷ややかで澄みきった美しさを、透き通る氷にたとえた詩情豊かな季語です。古代中国の伝説において、月の宮殿には氷が張っているという想像(月の氷・月宮の氷)がなされ、それが漢詩を通じて日本の連歌や俳諧に取り入れられました。実際の冬の氷ではなく、秋の澄んだ大気の中で白く光り輝く月光そのものの冷徹な透明感や、水面に鋭く映る月影の冴えを象徴しています。

この季語で詠むコツ

「月の氷」は非常に幻想的で格調高い言葉です。実際の冬の寒さや物理的な氷と混同されないよう、秋特有の澄んだ大気、静けさ、夜の肌寒さ(冷やかさ)を的確に描写することがポイントです。視覚的な「白」「透明感」「光と影」を意識するだけでなく、松風の音や水の音など聴覚的な要素を組み合わせることで、目に見えない月光の冷涼感を立体的に際立たせることができます。

相性のいい言葉・取り合わせ

・水や器に関する言葉:水面、池、盃、硯、泉、鏡 ・質感や色彩に関する言葉:澄む、砕く、冴ゆ、白金、透き通る ・自然や音に関する言葉:松風、虫の声、静寂、夜気

月の氷」の俳句例 (3件)

松風の音のくだくる月の氷
加賀千代女【現代語訳】松を吹き抜ける冷ややかな風の音が、まるで冴えわたる月の氷を粉々に砕いていくようだ。 【鑑賞】視覚的な月の澄んだ光(月の氷)を、松風という聴覚の刺激によって「砕ける」と表現した非常に共感覚的で鋭い名句です。秋の夜の研ぎ澄まされた冷気と張り詰めた静寂が、風の音によって鮮やかに際立っています。
盃に浮べて見ばや月の氷
広瀬涼菟【現代語訳】この澄みきった秋の月の氷のような冷ややかな光を、酒盃の中にそっと浮かべて眺めてみたいものだ。 【鑑賞】月見酒の席での風流な思いを描いた一句です。空に冴える月光を「氷」と捉え、それを手のひらの盃の中へと掬い取るかのような見立てに、蕉門の重鎮らしい繊細で粋な美意識が感じられます。
澄みまさる影や鏡の月の氷
正岡子規【現代語訳】一段と澄みわたる月の光の影よ、それはまるで鏡のように磨かれた氷そのものであるようだ。 【鑑賞】「鏡」と「氷」という二重の比喩を用いて、秋の月光の究極の澄明さを写生的に捉え直した句です。一切の濁りがない純粋な光の強さが、見る者の心を洗うような清々しさを醸し出しています。

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